ICTを活用し作条施肥を全層施肥に変えることで、省力化を図る作業体系をご紹介します。
この記事は2021年2月1日に掲載された情報となります。
ホクレン てん菜生産部 原料課
移植栽培は省力化が急務
全道のてん菜耕作面積は2019年で約5万6300ha。そのうち移植栽培が約7割を占めます。しかし、近年、てん菜耕作者の高齢化や労働力不足などによる作付戸数減と1戸当たり面積の増加で、労働時間の多い移植栽培は敬遠される傾向にあります。比較的省力な直播栽培が増えているものの、気象等の理由で適さない地域もあり、移植栽培面積の減少は、てん菜全体の面積減少にもつながっています。
そこで、移植栽培の省力化に向けホクレン清水製糖工場区域内では、近年普及が進むICTを活用し、施肥作業時間を削減する作業体系確立と普及に取り組んでいます。
ICTを有効活用し施肥作業時間を約70%削減
一般的な移植栽培の定植作業体系では、「砕土・整地→作条施肥(畝切り)→定植」という流れで作業が行われます。まず、施肥機を用いて畝切りしながら作条に施肥した後、その畝上を移植機が走って定植します。
ブロードキャスターによる全層施肥(写真1)の方が作業は早いですが、その場合は「全層施肥→砕土・整地→定植」と、砕土・整地後の定植になり、マーカー跡も無い状況で真っすぐ走ることが求められます。後方の移植機の状況確認が欠かせない中での直進走行はかなり難しく、取り組みにくいのが実態でした。
そうした中、RTK方式の自動操舵補助装置登場がきっかけとなり、2016年から清水製糖工場区域内生産者の協力で、全層施肥による省力化実証への取り組みが始まりました。砕土・整地後の定植でも自動操舵で正確な畝切りが可能で(写真2)、施肥作業時間は約70%削減が見込める結果となりました(図1)。
また、作条施肥では施肥後に雨が降ると定植に影響するので、天気予報を気にしての作業となりますが、全層施肥により定植までの作業時間が短くなることで天候変化にも対応しやすくなりました。清水製糖工場区域内のほか、技術情報を共有したことで中斜里製糖工場区域内でも普及が進んでいます。
定植作業時の少量施肥で生産性の不安を解消
新たな作業体系の施肥量は、一般的な体系と同じ量で問題無く、サブタンク付きの移植機を用い、定植時にも活着後のスターターの役割を果たす窒素を10a当たり4kg程度施用することで、全層施肥の生産性に対する不安も解消できました(写真3)。施肥量が少ないので補充の手間も少なくなります。
なお、全層施肥を実施する場合は、気象条件や土壌条件に注意が必要です。実施にあたっては普及センターなどの指導機関にご相談ください。
生産者も作業省力化を実感
2016年からホクレン清水製糖工場とともにこの栽培体系の試験に取り組み、2017年からてん菜全面積で活用している清水町の佐藤さんは言います(写真4)。
「この技術を導入することで作業省力化が図られ、天候に左右されることも少なくなりました。早期定植が可能となり、てん菜の収量アップにつながっています。これからも製糖工場と協力しながら、この栽培体系での技術向上に取り組んでいきたいと思っています」