営農を続けていくための
注目の省力化技術●PART2

コンベヤキャリアによる省力化

キーワード:コンベアキャリア機械収穫省力化農業機械
この記事は2025年12月8日に掲載された情報となります。

 

道総研 十勝農業試験場 研究部 農業システムグループ 研究主幹 原 圭祐さん

道総研 十勝農業試験場
研究部 農業システムグループ
研究主幹 原 圭祐さん

 

露地野菜の収穫は、労力や作業時間の負担が大きく、省力化が求められています。そうした中で、専用の高額な収穫機を導入せずに省力化や作業負担を軽減できる「コンベヤキャリア式収穫体系」に注目が集まっています。

 

安価に導入できる省力化方策

露地野菜の収穫では高齢化や労働力不足を背景に、省力化が課題となっています。

キャベツ、ブロッコリー、はくさいなど品目ごとに専用収穫機が開発されていますが、1台当たり1000万円を超えるものが多く、個人での導入は難しい面があります。

そこで活用してほしいのが「コンベヤキャリア式収穫支援機(以下コンベヤキャリア)」(写真1)です。収穫は手作業ですが、収穫に伴う運搬や収納などの労力を軽減できるのが大きな特長で、さまざまな野菜の収穫に使え、比較的低コストで導入できます。

 

写真1試作したコンベヤキャリアによるブロッコリーの収穫
写真1.試作したコンベヤキャリアによるブロッコリーの収穫

 

シンプルな構造で多品目に対応

コンベヤキャリアは、荷台や台車に可動式のベルトコンベヤを設置するだけのシンプルな構造です(写真2)。その移動方法でトラクタ牽引式、トラクタ直装式、自走式の三方式に分かれます(表1)。

 

写真2.試作したトラクタ直装式コンベヤキャリアの作業時(左)と移動時(右)
写真2.試作したトラクタ直装式コンベヤキャリアの作業時(左)と移動時(右)

 

表1.先行的に導入されているコンベヤキャリアの方式と特徴
表1.先行的に導入されているコンベヤキャリアの方式と特徴

 

ベルトコンベヤの駆動を油圧にするか、電動にするかは、作業条件や車両に応じ選択します。油圧の場合、既存トラクタの油圧系統を利用できます。

野菜の収納容器(ダンボール、ミニコン、鉄コンなど)や圃場条件などで、適した方式が異なります。例えばブロッコリーの収穫(写真1)は雨天時も行われますが、ぬかるみ圃場にも対応できる自走のクローラタイプ車両が使われることもあります。

道総研では、2022〜2024年度にそうした事例調査を行うとともに、安価で小回りが利き、多品目の野菜に対応できるトラクタ直装式のコンベヤキャリア試作機を製作し、その使い勝手や省力効果などを実証試験で確認しました。

ベルトコンベヤの最適な長さは、作業体制で変わりますが、家族経営や小規模共同利用の場合の、収穫作業3〜4名、コンテナ収納1名、車両運転1名体制を想定し、試作機のコンベヤ長は4mとしました。

 

作業時間を10〜40%削減 身体負担も軽減

実証試験では、ブロッコリー、はくさい、かぼちゃの収穫作業で、試作したコンベヤキャリアを活用し、従来体系との比較で作業時間10〜40%削減を確認しました。特にブロッコリーでは30〜35%の高い削減効果が得られました。また、身体の負担も軽減しました。

作業従事者からは「収穫物を詰めた容器の持ち上げ運搬回数が大幅に減り、腰や肩・腕への負担が軽減した」という声が多く寄せられました。

また高齢者から「コンベヤのフレームを手すり代わりに使用でき、圃場内を歩くのがラクになった」との評価もありました。収穫と収納作業の分担による圃場内の歩行距離短縮も、負担軽減につながっています。

 

写真3.試作したコンベヤキャリアによるかぼちゃの収穫
写真3.試作したコンベヤキャリアによるかぼちゃの収穫

 

コンベヤキャリアを導入するには

収穫支援機としてメーカーから販売されているものはありませんが(特注品扱い)、荷台や台車にベルトコンベヤを設置すればよいので、自作も可能です。必要に応じて地元の鉄工所やJA農機センターなど、金属加工や溶接ができる業者に製造を委託します。

試作機の仕様で業者に特注した場合の費用は約250万円、自作の場合は材料費のみで約100万円です。既存の台車やコンベヤ活用で更に費用圧縮できます。なお、畑の条件や作業人数に応じて望ましい仕様は変わります。

作業時間が約30%削減できるので、雇用労働の人件費削減が見込まれ、2ha規模の栽培面積なら、業者発注でも7年の減価償却期間内で投資回収可能な試算もあります。

実証試験の成果などは各地普及センターに提供しています。導入検討の際は、最寄りの普及センターや農業試験場までお問い合わせください。