品種

縞萎縮病抵抗性の期待の秋まき小麦新品種「きたほなみR」

キーワード:きたほなみコムギ縞萎縮病小麦新品種
この記事は2025年11月10日に掲載された情報となります。

 

道総研大西志全さん
道総研 北見農業試験場
麦類畑作グループ 大西 志全

 

POINT
❶縞萎縮病抵抗性以外は、ほぼ「きたほなみ」と同じです。
❷栽培法も「きたほなみ」と同じですが、過剰な窒素追肥や穂数過多に注意。

 

1991年に北海道で発生が確認されたコムギ縞萎縮病(以下、縞萎縮病)は、その後発生地域を拡大し続けています。

縞萎縮病は土壌伝染性の病害であり、薬剤での防除が難しく、抵抗性品種を栽培することが最も効果的な対策なのですが、北海道の基幹品種である「きたほなみ」は、縞萎縮病抵抗性が〝やや弱〟と劣ることから、縞萎縮病抵抗性をもった「きたほなみ」の後継品種の育成が強く求められていました。

 

「きたほなみR」が育成されるまで

「きたほなみR」は縞萎縮病抵抗性系統である「OW104」に「きたほなみ」を繰り返し交配する〝戻し交配〟と呼ばれる方法で育成された品種で(図1)、縞萎縮病抵抗性以外の農業特性や、加工適性は「きたほなみ」とほぼ同様です。

 

図1きたほなみRの育成経過
図1. 「きたほなみR」の育成経過

 

縞萎縮病が発生していない圃場では、「きたほなみR」は「きたほなみ」と同じ生育、草姿(写真1)を示し、成熟期、子実重、千粒重も「きたほなみ」と同等です(表1、図2右)。

 

写真1縞萎縮病未発生圃場での草姿
写真1. 縞萎縮病未発生圃場での草姿(「北見99号」は「きたほなみR」の旧系統名)

 

表1.縞萎縮病未発生圃場における特性
表1. 縞萎縮病未発生圃場における特性

 

図2縞萎縮病発生圃場_未発生圃場での子実重
図2. 縞萎縮病発生圃場・未発生圃場での子実重

 

また、縞萎縮病抵抗性以外の穂発芽耐性や耐雪性なども「きたほなみ」とほとんど変わりありません(表2)。

 

表2.耐病性_障害耐性
表2. 耐病性・障害耐性

 

縞萎縮病発生圃場で抵抗性を発揮

一方、縞萎縮病の発生圃場では、「きたほなみR」はその抵抗性を発揮し(写真2、写真3)、「きたほなみ」より平均で20%程度多収になります(図2左)。

 

写真2縞萎病縮発生圃場での春先の病徴
写真2. 縞萎病縮発生圃場での春先の病徴

 

写真3.縞萎縮病発生圃場での草姿
写真3. 縞萎縮病発生圃場での草姿

 

また、「きたほなみ」は縞萎縮病発生圃場では成熟期が遅れ、千粒重も軽くなりますが、「きたほなみR」は罹病しないので、そのような心配はありません。

 

栽培上のポイント

縞萎縮病の発生していない圃場では、「きたほなみR」は「きたほなみ」と同じ茎数および穂数の推移を示します。

このため、「きたほなみR」の栽培法(播種量、追肥量、追肥のタイミング)は「きたほなみ」と同じになります。

ただし、現在、縞萎縮病が発生している圃場で、春先の生育回復を狙って「きたほなみ」に余分に追肥している場合、同じ感覚で「きたほなみR」に追肥してしまうと、倒伏のリスクが高くなるので、注意が必要です。

「きたほなみ」は穂数過多になると、千粒重が低下し、製品率(篩(ふるい)上歩留)が低下する特性がありますが、「きたほなみR」も同様なので、適切な穂数になるよう播種量、播種期、追肥時期に注意することが必要です。

近年は7月の気温が高く、登熟日数が短くなる年次が増えており、細麦(さいばく)となるリスクが高くなっています。このため、穂数のコントロールの重要性はますます高くなっています。

また、近年、「きたほなみ」で赤さび病の発生が増加していますが、「きたほなみR」の赤さび病抵抗性は「きたほなみ」と同等の〝やや弱〟なので(表2)、「きたほなみR」についても赤さび病の防除を適切に行う必要があります。

「きたほなみ」の赤さび病の効果的な防除方法として、2024年に「効果的な秋まき小麦の赤さび病防除」が示されているので参考にしてください。

 

効果的な秋まき小麦の赤さび病防除
「効果的な秋まき小麦の赤さび病防除」
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