この記事は2025年2月7日に掲載された情報となります。
一般社団法人 全国片栗粉組合
理事長 山本 純三さん
一般社団法人 全国片栗粉組合
副理事長 久保 晃さん
揚げ物の衣、あんかけのとろみ、餅とり粉など、日本の食文化になくてはならない片栗粉ですが、原料となる馬鈴しょでん粉の供給量が減少し、需要をまかなえなくなっています。全国の片栗粉メーカー23社が加盟する全国片栗粉組合に実情をうかがいました。
馬鈴しょでん粉が慢性的に不足
ここ数年、でん粉原料用の馬鈴しょ(でん原馬鈴しょ)の生産量が減少し、需要をまかなえなくなっています。
「15年前に初めて年間生産量20万tを割り込み、2024年は約15万t強。生産量はなだらかに減少している」と言うのは、全国片栗粉組合の山本純三理事長。
続けて久保晃副理事長も片栗粉メーカーの現状をこう説明します。

「特に、ここ4年は極端に生産量が減り、現在は必要量の90%しか供給を受けていません。去年10月からの今期も同程度でとどまる見込みです」
北海道産の馬鈴しょでん粉が不足しているため、ヨーロッパからの輸入品が小売店の棚に並ぶようになってきています。
でん原馬鈴しょの生産減少理由として、ジャガイモシストセンチュウの発生があります。これにより、収量減少や種いも生産に影響を及ぼしました。
抵抗性品種「コナヒメ」などに切り替えて対策していますが、依然として不足が続いています。また、加工用馬鈴しょなどの生産にシフトする傾向があることも要因の一つです。
馬鈴しょでん粉の危機
全国片栗粉組合の会員である片栗粉メーカーは、スーパーや量販店、ドラッグストアなど小売店向けの小袋販売を中心としています。
かつて安価なコーンスターチをブレンドした片栗粉が市場に出回るようになった時期に、北海道のJA系でん粉工場で生産される馬鈴しょでん粉の片栗粉を推奨する目的で組織されたのが組合の始まりです。
「小売店の棚には必ず北海道のJA系の片栗粉を置きたいと普及・拡大に力を入れてきましたが、供給不足でその目的が果たせなくなっています。でん原馬鈴しょをもっと作ってほしいのはもちろんですが、我々の目的は、全ての小売店の棚に必ず北海道産の片栗粉を並べること。
棚を守っていきたいという思いが㆒番」と、山本理事長は訴えます。馬鈴しょを原料とするでん粉の工場は北海道にしかなく、国内産として出回る馬鈴しょでん粉はすべて北海道産です。

北海道のJA系工場で生産された馬鈴しょでん粉を100%原料とした片栗粉のみにロゴを印刷。
片栗粉のほかにも、飲食店などの外食産業、菓子・練り製品・即席麺などの加工食品、医薬品などに幅広く使われています。
「北海道産でん粉は粘度・白度に優れ、評価も高い。我々、全国片栗粉組合も農水省の担当官を訪問して作付面積確保について働きかけていますので、ぜひご協力お願いします」(久保副理事長)
2年間で3度の値上げ
ホクレンでん粉課でも、外郭団体と連携して共励会を開催したり、生産者講習会で栽培技術の優良事例を共有したり、営農支援に力を入れています。
また、2023年10月、2024年1月、10月と2年間で3度の値上げも実現しました。
供給量が足らず、いったん輸入品に置き換わってしまうと、再び北海道産の馬鈴しょでん粉に需要を戻していくのは至難の業です。北海道農業の輪作体系の維持はもちろん、日本の食文化を守るためにも、でん粉原料用馬鈴しょの生産拡大をお願いします。