実例で学ぶ達人の知恵‌ FILE02
小豆

目標を高く掲げ、実現していくために
中村 裕一さん(JAきたみらい)

キーワード:スマート農業堆肥小豆微生物

中村-裕一さんJAきたみらい

Profile:1979年生まれ。耕地面積33haの圃場で馬鈴しょを中心にてん菜、秋まき小麦、小豆、加工用スイートコーンを栽培。「あんこが好きで」と14年前に小豆の生産をスタートし、現在は作付面積3haとなっています。令和5年度全国豆類経営改善共励会で農林水産大臣賞を受賞。

 

この記事は2024年10月15日に掲載された情報となります。

 

天候に恵まれず、不作だった昨年の道産小豆。そのような状況でも、10a当たり306kgという収量を実現した中村裕一さん。自らの記録に挑むトップアスリートのように、データに基づく新しい技術の研究・実践を通じて、高い目標を達成した中村さんの取り組みについてお聞きしました。

 

小豆が経営の柱に成長

自分が甘党だったことと、馬鈴しょを中心とした輪作体系に組み込めることから取り組み始めた小豆。

当時は母の実家が豆農家だったこともあり、いろいろなことを教わったものでした。また、父はバーク堆肥を導入するなど土づくりを大切にしていました。

バーク堆肥は、地力だけでなく保水性を高める特徴を持っています。長年にわたって入れ続けたことは、干ばつに強く有機物が多い土壌づくりにつながったと思います。

できるだけ化学肥料を使わず土壌微生物のバランスを考えた小豆づくりにとって財産になりました。

当時は周りの仲間も小豆に取り組み始めたばかり。仲間と話し合い、試行錯誤しながら、さまざまな問題を解消して現在に至ります。

手作業で小さく始めた小豆栽培は少しずつ拡大。小豆は収益性が高く、ほかの作物に比べ経費がかからないので今では農場経営の大きな柱になっています。

小豆生産の基本は最終的な仕上げを揃え、全ての粒を均等にすることです。近年、気候変化の影響もあり、小豆の生育期間が長くなっています。

そのため、先に付くさやと後に付くさやでは登熟期間が変わってきます。まずは発芽を揃えることが大事。その後は畑の土質などで生じる生育の差を揃えます。

生育が進んでいるところは中耕の時に根を切り、成長を抑えることで全体の生育を揃えています。

 

写真1小豆の生育状態を均一にする
写真1.小豆の生育状態を均一にするために、畑のチェックは毎日欠かさない中村さん。

 

データを検証し仲間と挑戦し続ける

農協青年部の畑作専門部で小豆の試験を行った時に「坪刈りで10a当たり540㎏」という結果が出たことがありました。

全ての株が能力を100%発揮すればという理論値ですが、可能性はゼロではない。その時から540㎏は私の目標になりました。

小豆が持つ可能性に挑戦したいという気持ちが大きなモチベーションになっています。無理かもしれないけれど、目標として本気で取り組んでいます。

高い目標に近づくため研究と実践は欠かせません。今は大手食品メーカーなどと協力して新しい資材の検証も重ねています。

「なんとなく良さそう」ではなく、科学的なデータを重ねて検証し、挑戦し続けることが大切。そして、志を共にする仲間の存在も大きいです。

つらいこともありますが、そうした仲間たちと㆒緒に目標に向けて闘っていくことがやりがいにつながっていると思っています。

 

写真2機械化も進める
写真2.機械化も進め、小豆の播種作業はほぼ一人で行います。収穫も最盛期は手伝ってもらうものの、ほぼ一人での作業で賄える点も小豆のメリットです。