この記事は2019年2月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所
営農支援センター
営農技術課 齋藤 良隆さん
POINT!
❶適正な土壌pHで栽培することが旺盛な生育につながります。
❷ただし、てん菜「そう根病」、馬鈴しょ「そうか病」の常発地では、pH5.5にする必要があります。
土壌の酸性化がもたらす影響
多くの作物は土壌が酸性化すると生育に大きな影響を受けます。日本の土壌は一般的に雨水や施肥等により酸性化しやすい傾向にあり、土壌pHを測定して酸度を矯正することが土づくりの基本です。基準値(表1)以下の酸性土壌では、土壌中のアルミニウムによる直接的な生育阻害、リン酸の固定※、微量要素の過剰害等の酸性障害が発生しやすくなります。
※リン酸が土壌に吸収されること。これにより作物の吸収利用が防げられる。
酸性障害の影響は作物の地上部で確認できますが、直接影響を受けている根については普段観察することができません。このため今回、根箱を用いて特殊な方法により根を観察してみました。
観察方法
使用する根箱は下図のように側面がプラスチック製で、前面が硬質ガラスの構造になっています。
始めに仕切板を挿入し、左半分にpH4.5、右半分にpH6.0の土壌を詰め、仕切板を抜き取って両土壌が接するところに作物を播種しました。
※「酸性土壌と作物生育(橋本 著)」を参考
根の生育状況
根箱で観察した根の生育状況を写真で紹介します。
比較的耐酸性に優れるえん麦の根はpH4.5側でも十分生育していました。一方、人参、大豆、てん菜の根はいずれもpH4.5側の生育が強く抑制されていました。馬鈴しょの根もpH4.5側では多少は生育している様子が見られたものの、pH6.0側と比べると抑制されていました。
適正な土壌pHでの栽培が重要
今回の結果のとおり、適正な土壌pHで作物を栽培することが旺盛な生育につながります。ただし、てん菜「そう根病」や馬鈴しょ「そうか病」の常発地では基準値内でも高pH側では発病を助長するため、pH5.5にする必要があります。
以上のことから、3年に一度は土壌分析し、石灰質資材等で栽培環境を整えることがとても重要になります。