肥料

肥料の基礎知識③ ~窒素〜

キーワード:施肥窒素肥料農薬

肥料の基礎知識③ ~窒素〜

 

この記事は2018年12月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 肥料農薬部 技術普及課

 

POINT!
●窒素は作物にとって最も重要な肥料成分です。その役割や、土壌中の形態、窒素肥料の特長を知り上手に活用しましょう。

 

作物にとっての窒素の役割

窒素は肥料の3要素(窒素・リン酸・カリ)のつで、作物の生育に最も重要な元素です。作物中ではタンパク質、アミノ酸、葉緑素、酵素、ホルモン物質などの主要な成分で、作物の体づくりや生体反応(生育、養分吸収、光合成などを促進する働き)には欠かせません。作物が窒素を適切に吸収することで、茎葉や根の生育が良好となり、葉の緑色が濃く養分吸収も盛んとなります。

しかし、窒素は多すぎても少なすぎても作物に悪い影響を与えるおそれがあります(表1)。

 

表1.窒素の欠乏症状・過剰症状
表1.窒素の欠乏症状・過剰症状

 

過剰な窒素投入はひかえ、土壌診断等に基づいて適正量を施肥することが大切です。また、作物の窒素吸収の程度は葉色などの生育状況にもあらわれます。秋まき小麦では、茎数や葉色で窒素追肥量を調節する施肥法が普及しています。

 

土壌中の窒素

土壌中の窒素は、いくつかの元素が結びついた化合物のかたちで存在しています。その内、作物に吸収されやすいのはアンモニアや硝酸のような(無機態)窒素です。土壌中の腐植やたい肥等の有機物に含まれる(有機態)窒素は、微生物(アンモニア化成菌など)によってアンモニア態窒素まで分解(無機化)されます。また、畑土壌ではアンモニア態窒素が微生物(硝酸化成菌)によってさらに硝酸態窒素にまで変化します(図1)。

 

図1.土壌中での窒素の形態
図1.土壌中での窒素の形態

 

硝酸態窒素は多くの作物にとって最も吸収しやすいですが、流亡しやすく地下水汚染など環境負荷の原因にもなります。一方、アンモニア態窒素は土壌中で保持されやすいものの、施設栽培では、中性やアルカリ性土壌に蓄積したアンモニア態窒素が、急激な温度上昇でガス化し、作物に障害を与えることもあるので留意してください。

 

窒素質肥料の特長を踏まえた活用

窒素質肥料は、それぞれの肥効の速さや施肥後の土壌への影響などの特長を踏まえて使うことが大切です(表2)。

 

表2.主な窒素質肥料の特長
表2.主な窒素質肥料の特長

 

肥料袋やフレコンの保証票には「窒素全量」「アンモニア態(性)窒素」「硝酸態(性)窒素」などに分けて、その種類や量が記載されています(図2)。

 

図2.保証票の記載例と窒素成分の見方
図2.保証票の記載例と窒素成分の見方

 

例えば、硝酸態窒素の割合が高い肥料は作物に窒素成分が速く吸収されるため、初期生育の促進や追肥時の速い肥効が期待できます。なお、畑作等でよく聞かれる「硫安と尿素のどちらが速効きか?」について、尿素はアンモニア態窒素への無機化を経るので遅くなる印象がありますが、土壌のECを高めないので硝酸化成の速さが硫安より優り、肥効も速くなります。肥効の速さは、地温や降雨などにも影響されます。

EC電気伝導度(肥料養分の蓄積度合を表す)

 

写真.主な窒素質肥料
写真.主な窒素質肥料