この記事は2021年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT
●2020年度施防協試験より赤かび病防除に対する効果が確認されました。
施肥・防除に関する課題解決に向けJA・ホクレンでは、農業試験場・普及センターとの連携により、全道各地区に「施肥防除合理化推進協議会(施防協)」を組織し、現地試験を行っています。今回は2020年度に実施した試験の中から、小麦の赤かび病に対する新規殺菌剤を紹介します。
徹底防除が欠かせない小麦の赤かび病
赤かび病は、糸状菌によって引き起こされる小麦の重要病害です。開花後〜乳熟期にかけて小穂の褐変、白化といった症状がみられ(写真1右)、穂軸まで侵されるとそこから上位の小穂が枯死することもあります。また、乳熟期〜成熟期にかけて小穂に桃色〜橙色のかびが発生するのもこの病害の特徴です。
本病は収量の低下や、被害粒の混入による品質の低下を招くばかりでなく、一部のフザリウム属菌(写真1左、表1、図1)によって産生される人畜に有害なかび毒(DON)も問題となります。被害粒の混入や、かび毒の蓄積には厳しい基準が定められており、基準を超過しないためにも赤かび病の徹底防除が重要です。なお、道内では2016年と2018年に多発しており、今後も注意が必要と考えられます(表2)。
![コムギ赤かび病菌(左 フザリウム属菌の1種 出典:ホクレン農総研原図)、赤かび病被害穂(右 出典:ホクレン技術普及課原図)](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/66e091bc2d19932de79e174ad215915d-6-1024x461.png)
![コムギ赤かび病の種類](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/0161352a3d2ab457dfa6640c52a8eb52-30-e1668566006464-1024x225.png)
![各予察圃における赤かび病の発生菌種割合(平年値)](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/795316b92fc766b0181f6fef074f03fa-43-1024x1024.png)
![近年の発生状況(現況調査)北海道病害虫防除所HPより◎:やや多~多、□:並、△:やや少~少](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/16ba140365ea4b33cfc7d13120e17e62-e1668566086707-1024x579.png)
新たな殺菌剤「ミラビスフロアブル」
「ミラビスフロアブル」(写真2)は、新規成分「アデピディン(成分名:ピジフルメトフェン)」を含む殺菌剤です。従来主要に使用されていたDMI剤とは別系統であるSDHI剤に分類されることから、赤かび病の新たなローテーション薬剤の一つとして期待されています。
![ミラビスフロアブル 500㎖と5ℓ](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/0e3ce3830756d786035d5e62a144eaad-1024x576.jpg)
現地試験で赤かび病への効果を確認
道内5圃場において「ミラビスフロアブル」の防除効果を確認した結果、赤かび病に対する効果は高く、慣行薬剤を用いた対照区と比べおおむね同等以上の効果を確認しました(表3)。また、本薬剤はフザリウム属菌とニバーレの両菌に対して効果を示すことが確認されました。なお、DON濃度についても1圃場で調査を行い、赤かび病抑制により、DON濃度の低減効果も確認しています(データ省略)。
![道内5圃場の施防協試験結果まとめ](https://agriport.jp/wp-content/uploads/2022/11/63a6631bb0826417be60b91a4e23ffdf-2-e1668566236547-1024x292.png)
小麦の赤かび病防除にご活用ください
2020年の試験をとおして、「ミラビスフロアブル」は赤かび病に対して高い防除効果を有することが確認できました。単一の有効成分でフザリウム属菌とニバーレの両菌に対して活性を持つことから、複数の菌種が発生する地域において特に普及性が高いと考えられます。なお、使用にあたっては、ラベルを確認してください。