この記事は2017年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所 営農支援センター 営農技術課
POINT!
近年、十勝、網走地方にテンサイ西部萎黄病が大発生し、大きな被害をうけました。来年度もまだ発生の恐れがあります。アブラムシなど感染源には十分な注意が必要です。
病徴と被害について
テンサイ西部萎黄病は、平成3、4年に西胆振、後志に大発生し、大きな被害を受けました。感染すると被害が大きく、糖量で30%以上も減収します。
畑では、黄化症状が数株から数十株が点状またはスポット状にみられます(写真1)。
写真のような大型の発病は、ウイルスをもった有翅(ゆうし)モモアカアブラムシが飛来し、テンサイに感染を起こし、それから生まれた無翅(むし)アブラムシによって2次的に感染が広がったものです。
黄化症状は7月下旬頃からみられますが、9〜10月に明瞭になり(写真3)、畑全体が黄化する場合があります(写真2)。
発病株は、葉脈と葉脈の間が黄化し、古い葉は厚みを帯び、触るとごわごわした感じになります(写真4)。
病原ウイルスと伝染方法について
この病気は、テンサイ西部萎黄ウイルスによっておこり、病名はウイルス名から、西部萎黄病とされました。アメリカ西部で発見されたことから"西部"という名が付けられました。
しかし、当課でこの病原ウイルスについて詳しく解析したところ、アメリカ原産のウイルスとは、寄生性や遺伝的特性がかなり異なることがわかり、ウイルス名を黄化ウイルス(正式名黄葉ウイルス)、病名を黄化病と改名することを提案しています。
西部萎黄ウイルスはハクサイ、カブ、キャベツ、ブロッコリー、ダイコンなどアブラナ科作物やナス科植物などたくさんの植物に感染するのに対して、北海道で発生の黄化ウイルスはこれらの作物には感染しないことがわかりました。
ウイルスは球状で(写真5)、モモアカアブラムシによって伝搬されます(写真6)。
アブラムシは罹病植物を1時間以上吸汁するとウイルスを保毒し、30分以上の吸汁でウイルスをうつしますが、吸汁時間が長いほど伝染率は高まります。一度保毒したアブラムシは、一生ウイルスを感染させる能力を持っていますが、子孫(子虫)には伝わりません。
感染源について
当課では、ウイルスがどのような植物に感染するか調べました。その結果、テンサイ以外に表1に記した植物に感染することがわかりました。
もしこのような作物や雑草が秋季にウイルス感染し、越年すると、重要な感染源になる可能性があります。
なお、ハクサイ、カブ、キャベツ、ブロッコリー、ダイコンのようなアブラナ科の作物はウイルスに感染しませんが、モモアカアブラムシの繁殖に最適な植物です。とくに越年ハウス内では、アブラムシが発生しないよう、十分な注意が必要です。
(営農技術課 顧問 玉田 哲男)