この記事は2020年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT
●「刈り取り後の追肥」と「草種構成に合わせた施肥」が良質な採草地を長期間維持するために重要です。
草地は、基幹草種の種類やマメ科の割合によって、年間に必要な窒素施肥量や時期が異なります。「北海道施肥ガイド」には、適切な施肥量や施肥時期ごとの配分が示されています(表1)。
しかし、労働力不足や2番草の収量を求めず肥料コストを抑えたい意向などから、1番草収穫後に追肥しない例が多く見られます。また、草地の状況を確認せずにどの草地にも毎年同じ銘柄や量を施肥する事例もあります。
追肥を行わなかったり、必要な量より少ない施肥管理では、雑草に負けやすく牧草の割合が大きく低下するため、草地更新がすぐ必要になったり、牧草の収量が減るなどの影響が出てしまいます(表2)。また、それが乳量低下につながり、酪農生産性を悪化させる恐れもあります。そのような事態を避け、良質な採草地を長い期間維持する施肥のポイントを紹介します。
適切な追肥は翌年の1番草のためにも重要
チモシー主体草地の場合、1番草収穫後の追肥が、収量や草種構成にどんな効果があるか調べたところ、翌年の1番草、2番草の収量が増加するとともに、雑草侵入を抑制し、草種構成の悪化を防ぐことが確認できました(図1)。
これは、チモシーは1番草刈り取り後に世代交代するので、新しい分げつ(茎)の発生に時間がかかり、オーチャードグラスと比べて再生がゆっくりなのに加え、分げつに必要な肥料が足りないと雑草に負けてしまうからです(写真1)。
そのためチモシーでは、1番草収穫後10日頃までの追肥が、翌年の1番草を維持するためにも特に重要です。草地の土壌養分状況に応じた肥料(表3)を使い、適切な追肥に努めることが大切です。
マメ科牧草を生かすため草種構成に合わせた施肥を
マメ科牧草はタンパク質含量やミネラル含量が高いので、収穫された牧草の栄養価を向上させます。また、根粒菌が固定する窒素を利用・放出するので、マメ科率が高いほど与える窒素肥料の量は少なくて済みます(表1)。しかし、マメ科率の低い草地で必要な窒素肥料を与えないと、イネ科牧草が減ってしまいます。圃場のマメ科率に応じて適切な施肥をすることで、イネ科牧草とマメ科牧草、双方の収量アップにつなげることができます(図2)。
なお、施肥改善による草地維持を図るには、草地更新時の雑草対策も合わせて重要です。できる範囲で施肥管理を実施し、良質な採草地を長持ちさせ、酪農生産性の向上に努めましょう。