2021年のポイント!
1 暑熱対策の期間に留意
2 災害に備えて、危機管理の徹底を
3 【新技術】過肥や削痩(さくそう)を防ぐ黒毛和種繁殖牛の栄養管理
4 【新技術】出穂予測システムで、計画的な牧草収穫
この記事は2021年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局
技術普及課 総括普及指導員
竹岡 裕之さん
昨年の生乳生産は順調に推移しました。生乳出荷戸数は減少したものの、一戸当たり乳牛頭数は増加の一途。規模拡大の傾向は今後も続く見込みです。乳牛に対する和牛の人工授精割合は依然として高い水準で、乳牛頭数の減少が懸念されます。
肉牛は新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要が落ち込み、価格が一気に下落しましたが、徐々に回復傾向にあります。素牛価格も下落していますが、実績のある血統や発育が良好な素牛は比較的高値で取り引きされています。
飼料作物は、昨年1番草の収穫時期に降雨による刈り遅れがあったので品質低下が懸念されています。
今後、乳量を注視していく必要があるでしょう。一方で飼料用とうもろこしの生育、収穫は順調でした。
ポイント1
暑熱対策の期間に留意
近年、気温や湿度の推移が変化し、乳牛の日射病や熱射病の発生状況も変わってきました。夏はもちろん春から秋口まで暑熱ストレスを受ける期間が長くなってきています(図1、写真1)。送風や給水などの施設面だけではなく、良質粗飼料の給与やビタミン・ミネラルの増給など栄養面でしっかりと準備を整え、暑熱ストレスの緩和を図ってください。
ポイント2
災害に備えて危機管理の徹底を
昨年は自然災害による被害は少なかったものの、近年は気象変動が大きく、今まで災害の少なかった地域でも、台風、暴風雨、暴風雪など、いつ停電や断水に見舞われてもおかしくありません。万が一に備えた危機管理が重要です。道では「災害における酪農危機管理対策マニュアル」を作成して注意喚起しています(図2)。事前の備えに役立ててください。
ポイント3【新技術】
過肥や削痩を防ぐ黒毛和種繁殖牛の栄養管理
黒毛和種の繁殖牛がしっかりと栄養をとっているかどうかをチェックできる「飼料給与基準と栄養管理モニタリング法」が示されました。維持期の粗飼料給与は、飼料分析値から日本飼養標準肉用牛成雌牛のTDN(可消化養分総量)充足率90%を目安とします。黒毛和種繁殖経営の場合、2番草はTDN60%以上となる割合が高く、維持期の飽食給与を避けなければなりません。そこで参考にしたいのが腹胸比です(図3)。腹囲と胸囲の比が1.15未満だと飼料摂取不足の指標となります。発育良好な素牛生産に向け、繁殖牛の適正な栄養管理を目指しましょう。
ポイント4【新技術】
出穂予測システムで計画的な牧草収穫
現在運用されている地域別のチモシー1番草の出穂予測システムが、全道共通のモデルへ全面的に改良されました。干ばつにより出穂が早まる傾向も反映されています。
この新モデルにメッシュ農業気象データを適用した新システムでは、従来の早生品種に加え中生品種の出穂期も道内全域で途切れなく予測するほか、予測日以降の予報降水量も表示します。計画的な牧草収穫作業にお役立てください(写真2、図4)。インターネット環境があれば、利用登録だけで無料で使えるシステムです。詳細は酪農試験場 草地研究部へお問い合わせください。