この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。
木島 隆浩さん(JA今金町)
Profile:祖父の代から続く農家の3代目。かつては畑作や馬の繁殖も行っていましたが、隆浩さんが黒毛和種の繁殖に特化。親牛70頭を含む130頭を母と姉とで世話しています。家族は妻と6歳から1歳までの4児。
今金町で黒毛和種の繁殖を手掛ける木島隆浩さん。7年前にいち早く分娩監視装置「モバイル牛温恵」を導入しました。どのように活用し、どこが便利なのかを教えてもらいました。
POINT !
•24時間監視できることを考慮すればコストの元はとれる。
•分娩事故を減らせるだけでなく、生活に余裕ができる。
子牛が大きくなってきた
「㆒度分娩事故があると不安になって、夜はよく寝られなかったし、日中は離れた草地から慌てて戻ってきたこともあった」と言う木島隆浩さん。2017年に牛温恵を導入しました。
きっかけは宮城県で開催された全国和牛能力共進会に出陳したとき、牛温恵のブースで話を聞いたこと。デモ機を貸し出すというので試してみて、すぐに購入しました。
「増体を目指した改良の成果なのか、最近の子牛は大きくなっている。自然分娩で産みづらくなってきていると感じる。15年もやってるから、牛を見れば今日は出る、出ないってだいたい分かるけど、たまに予期せぬケースがあるんですよね」
分娩事故を未然に防ぐ
導入後、牛温恵に助けられた場面が多々ありました。
「分娩の兆候を感知する『段取り通報』から20時間前後に出産になることが多いんだけど、24時間過ぎても産まれない。様子がおかしいから、たまたま来ていた獣医さんに診てもらったら、中で双子が重なっていたんです」
産道から手を入れたら、足がいっぱいあって詰まっている。1頭を奥に押しつけて順番に引っ張り出し、事なきを得ました。
「子牛が尻から産道に入っちゃって足が出てこない時もあった。獣医さんが帝王切開の準備をしてくれたけど、なんとか足に手が届いたので逆子で出せた。もし牛温恵がなかったら、まだかなと思いながら、そのまま待っていただろうし、そしたら間違いなく死んでいたと思うね」
木島さんは牛温恵の通知だけスマホの着信音を変えて設定。自宅では子どもが音で判断して「駆け付けが入ったよー」と教えてくれるほど定着しています。
木島さんの導入を機に、JA今金町の青年部で牛温恵の勉強会を開催。今では黒毛和種の生産者4人に1人が使うほど普及しました。
カメラ併用でさらに便利に
導入コストは安くはないものの「1年に1頭、分娩事故を減らせたら元がとれる」と木島さん。「月々の通信量も、うちは7000円未満。その金額で夜中も見てくれる人なんていないでしょ」と、割安感を強調します。
木島さんは牛温恵の導入後、さらに牛舎の分娩房2マスに遠隔操作できる高性能カメラを4台取り付けました(写真2)。
「夜間にスマホに通報がきたら、ベッドの上でカメラの角度や倍率を操作して、一次破水、二次破水、足が出てきた、と確認できる。夏場に牧草をやっているときでもスマホで様子を見られるし、様子が変だったら家に電話して獣医を呼んでと指示できる」
牛舎に見に行けば牛が起き上がり分娩の時間が延びてしまうので、今は隣の牛舎にいても、あえてカメラで見守ることもあるそうです。
「牛温恵とカメラで、夜に寝られるようになったし、明日の出産はないとはっきり分かるから、子どもたちを連れて出かけられるようになった。家族も喜んでますよ」
木島さんの出荷する素牛は広く全国に買い取られ、なかには松阪牛になるものも。現在、肥育しているのは2頭だけですが、将来的には繁殖、育成、肥育までの㆒貫生産の割合を増やしていきたいと考えています。