この記事は2019年8月1日に掲載された情報となります。
道総研 畜産試験場 基盤研究部
生物工学グループ 主査 小山 毅さん
(前酪農試験場 乳牛グループ 主査(繁殖))
profile:岐阜大学大学院修了。根釧農試乳牛繁殖科、同乳牛グループを経て、今年から現職。胚移植に関する調査研究を担当。
酪農試験場では、酪農場で蓄積されている営農情報(牛群検定成績、家畜診療および収支データ)の解析や現地酪農場における実態調査を行い、周産期管理の評価と改善方法をまとめましたので紹介します。
分娩後の死廃とそのリスク要因
草地型酪農地帯の酪農場76戸のデータを解析した結果、分娩後56日以内の死亡による除籍(以下死廃)割合が高い農場では、収益と305日乳量平均が低いことが分かりました。このことから、周産期の管理を考える際には、死廃とそのリスク要因に注目することが重要と考え調査を行いました。
その結果、死廃の発生には周産期疾病や初回検定時の乳成分値異常の発生、乾乳期における牛の状態(表1)が影響していることが分かりました(図1)。
また飼養管理では、産褥牛(さんじょくぎゅう)(分娩後3週以内の牛)の観察をしていないことや、分娩前に1頭当たりの飼槽スペースが狭い、分娩前に牛群間の移動回数が多い、休息場所が無い、などが死廃と関係していました。
周産期管理の良し悪しをモニターする
営農情報を利用して周産期管理の良し悪しを判断する方法と改善の考え方(図2)で、注目すべきは、北海道酪農検定検査協会が運用する〝繁殖Web DL〟の乳脂肪率異常割合、死廃割合および死産割合です。
これらが他農場より多い場合、まず産褥牛の看視を強化して体調の悪い牛の早期発見と治療を行います(図2①)。
同時に農場の診療記録などを調べ、どの周産期疾病が多いのか問題点を整理しましょう(図2②)。例えば第四胃変位治療や乳脂肪率異常割合が多い場合、乾乳期に過肥牛が多いと考えられます。
問題点をある程度特定したら、取り組みやすいところから飼養管理を改善していきましょう(図2③)。