この記事は2018年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 畜産生産部 生産技術課
POINT!
❶自給飼料の栄養価、発酵品質を確認する。
❷手持ちの自給飼料に合う給与体系を組む。
酪農では生産性向上のため、採食量を高める飼養管理や飼料設計が行われています。その際、給与する自給飼料の分析により、栄養価や発酵品質を把握し、より実態に合う飼料給与体系を組むことができます。
今年のように1番牧草の収穫遅れにより栄養価や発酵品質が懸念される年は、粗飼料分析をおすすめします。
①平成30年度の1番草(生草)分析値の傾向
(1)分析検体数の推移
1番牧草の生草(サイレージや乾草に調製する前の状態)での分析は、収穫年の栄養価を推測するため行われています。
例年、収穫開始の6月上旬から収穫ピークの6月下旬〜7月上旬に分析検体数が多い傾向ですが、今年は7月中旬〜下旬の検体数が増えており、収穫遅れが表れています(図1)。
(2)時期による分析値の変化
主な栄養価のCP(粗タンパク質)、TDN(可消化養分総量)、NDF(中性デタージェント繊維〜繊維含量の指標)の受付旬ごとの傾向をグラフに示しました(図2・3・4)。
一般的に、牧草は生育日数が進む(=収穫が遅れる)につれ、収量やNDFは増加しますが、CP、TDNは減少します。今年度産も同様の傾向がみられ、特に7月に入ってからのCPは低く、5%程度の値もみられます。
②サイレージでの粗飼料分析をおすすめします
生草の分析結果から、CP(図2)を例にすると7月下旬では中央値は7.5%ですが、最大値12.8%、最小値5.1%と、同じ受付旬(=収穫日)でも大きな差があります。
サイレージや乾草での給与時の栄養価も、同様に幅があることが推測されるため、粗飼料分析を行い栄養成分を確認しましょう。
また、サイレージの発酵品質は牛の採食量にも影響するため、基本分析と併せて、発酵品質の分析(乳酸、酢酸、酪酸、アンモニア態窒素)をおすすめします。
③自給飼料の栄養価が低い場合の注意点
(1)餌槽に飼料を切らさない
繊維含量の高い牧草の場合、反芻時間、採食時間が長くなります。食べたいタイミングにエサに届かない、エサがない状態だと、採食量は大きく低下するだけでなく、休息時間も短くなります。
牛の届く場所に、エサ(粗飼料やTMR)を切らさないようにしましょう※。
※特に分離給与で牧草を刈り遅れた場合は、飼槽に残っているエサ(草)が、牛が食べないエサ(草)であるケースが増えるので注意が必要です。
(2)分娩後のケトーシスに注意
採食量が上がらず、自給飼料の栄養価が低いとエネルギー不足になり、ケトーシス発生のリスクが高まります。
粗飼料分析結果に基づき乾乳期の飼料の組み直しや、糖蜜飼料(混合スイートタイム、デーリィリックス)の給与などをおすすめします。
ホクレンの粗飼料対応について
消化性が良く、栄養価も豊富な輸入乾牧草(アルファルファヘイ)の取りまとめを行っています(8月〜10月)。
マメ科のアルファルファは、イネ科牧草に比べ、繊維の構造上、ルーメンの通過速度が速く、乾物摂取量の増加が期待できるほか、繊維と合わせてタンパク質も補給できます。
お知らせ
粗飼料分析の受付、分析は、2018年10月1日より訓子府町のホクレンくみあい飼料㈱粗飼料分析センターから、ホクレンくみあい飼料㈱釧路西港工場に移転しています。