この記事は2017年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 中標津支所
POINT!
牧草の刈り取り高さを変えることで、高品質な粗飼料生産を行っています。
中標津町のJAけねべつ管内にあるTMRセンター「アクシス」では、粗飼料品質向上のため多くの取り組みを行っています。中でも、牧草の刈取り位置を従来より高いところに変えることで、大きな成果をあげています。その取り組みを紹介します。
1.TMRセンター「アクシス」の概要
JAけねべつ管内では、現在4カ所のTMRセンターが稼働していますが、「アクシス」は最初にできたセンターで、JAが直接運営しています。平成23年度から稼働を始め、草地約700ha、飼料用とうもろこし畑を約210ha 所有し、搾乳農家15戸、育成センター1戸の計16戸へTMR(混合飼料)を供給しています。
「アクシス」では、自給飼料を主体とした「エサ」の給与を目指すとともに、牛の事故率が減り出荷乳量が増えるような「エサ」を供給して構成員の所得が上がるよう、良質な自給飼料の生産に特に力を入れています。
どうすれば高品質で量・質共に安定的に粗飼料を生産・供給できるか、日ごろから草地の更新や維持管理、収穫方法などさまざまな工夫を重ねていました。
2.牧草収穫時の刈り取り高さ変更
サイレージの品質を上げるには、収穫する牧草の品質と同時に土砂等の異物が混入しないことが大切なことから、刈り取る位置を高くすることに取り組みました(写真1)。
具体的には、牧草を刈り取るモアコンディショナーの刈り取り刃の下に、ソリ状の台を装着し、地面から4~5cmだった刈り取り高さを、地面から10cm程度に変更しました(写真2)。
これにより1番草の収穫量は10~15%減少したものの、牧草の栄養素が豊富な部分(根に近い茎は、高NDF、低タンパク)のみを利用することができ(写真3)、サイレージの不良発酵の原因となる地表付近の雑草やスラリー、堆肥、土砂等の異物の混入も防ぐことができました。
1番草刈り取り後の2番草は、再生が早まり収穫量が増加したので、1、2番草を合わせた収量は変わりませんでした。また、草地を傷つけにくいので、裸地のリスクが減り、雑草の侵入抑制効果も期待しています。
3.取り組み成果と今後に向けて
「牧草の高刈り」をはじめ、「イネ科多草種の混播」、草地と飼料用とうもろこしとの「輪作体系実施」、「草地へのエアレーション(溝切り)実施」、「スラリー散布方法の変更(春散布の中止)」などの取り組みにより、「アクシス」では、サイレージの発酵品質が向上し、構成員の個体乳量と出荷乳量の増加につながっています(図1)。
JAけねべつの西塚秀夫組合長は、「JAが運営しているTMRセンターだからこそ、いち早く確認試験や実証に取り組み、実践につなげることができたと思っています。JA管内のモデルとして、他のTMR センターを含めた組合員への営農に役立ち、管内全体のレベル向上に大きく貢献していると思います」と話しています。
JAとしても今後さらに優良事例を普及させていきたいとのことです。