子牛の管理

分娩直後の子牛の管理について

キーワード:子牛の管理酪農
分娩直後の子牛
分娩直後の子牛

 

この記事は2016年10月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 畜産生産部 生産技術課

 

POINT!
分娩直後の子牛は早く乾かして温め、初乳を飲ませることが大切です。

 

安定した生乳生産にむけて

生乳生産を維持するためには、個体乳量だけでなく、牛群規模も重要です。しかし、牛の出生時の事故が多いことが、大きな課題となっています。

分娩が多い時期は乾乳施設も手狭になりやすく過密ストレスや採食量の制限から周産期病が多くなる時期です。月別の分娩頭数を示すと、分娩頭数は7月から8月に多くなっています(図1)。

 

図1
図1
※「分娩予定頭数」は受胎が確定した受精に280日を加算した日を分娩予定日とし、各月の分娩予定日の合計件数に2012年01月から2016年06月までの分娩頭数/分娩予定頭数の比率の平均値を乗じて算出。

 

しかし、分娩が多いことと死産率が高いことがイコールではありません。(公社)北海道酪農検定検査協会のデータを見ると11月から3月にかけて死産率が非常に高く推移します。特に2月は、分娩頭数は少ないですが、死産率は夏場と比べて2%程度高くなります(図2)。

 

図2
図2

 

子牛は寒さに非常に弱い

死産胎子・子牛の大部分は分娩開始時点では生きているとも言われています。そのため死産の原因が環境の違いだとすると、ポイントとなるのは「気温」です。

乳牛は寒さに強いとされています。しかし、牛は元々季節分娩の動物なので春先に生まれるはずの子牛が寒さに強いわけがありません。

限界温度はプラスですから(13℃)、出生時は生きていたとしても苛酷な環境で命を落とすケースは少なくありません。

 

限界温度の下限
限界温度の下限

 

寒さに弱い子牛を守るためのポイント

①早く乾かす+温める

水は空気よりも急激に体温を奪います。30度の部屋は暑いですが30度のお風呂はぬるいと感じるように水と空気では熱の伝わり方が異なります。

体温を維持するためには、子牛の周りに暖かい空気の層を早く作ってあげることです。ただ温めても水が体温を奪って蒸発するので温めた効果が半減してしまいます。できるだけ早く乾かすことが重要になります。

冷たい隙間風が当たらないようにカーフハッチを用意し、カーフベストや赤外線ヒータなどで温めることも有効な手段です。

 

②初乳を飲ませる

エネルギーを摂取しないと体温は上がりません。子牛は親牛と比べても体脂肪が少ないので、免疫抗体の獲得はもちろんですが、早く栄養を摂取させることで体温の低下を防ぐことができます。

 

訓子府実証農場での作業スケジュール

訓子府実証農場の作業スケジュールは次の通りです。

①子牛の娩出
②鼻を麦稈などで刺激して自発呼吸を促進させる
③親牛に舐めさせる+人間もタオルで拭く
④臍帯の処置
⑤初乳を飲ませる

 職員が分娩に立ち会うので処置はできていますが、少しでも子牛の活力を高めるために今秋から③の工程にカーフウォーマーを導入します(写真1)。

 

カーフウォーマー1

写真1:カーフウォーマー(ヒーター付子牛加温装置)。
写真1:カーフウォーマー(ヒーター付子牛加温装置)。

カーフウォーマーを実際に使っている農場によると、お腹の下から温かい空気を循環させることで3〜4時間でフワフワに乾き、初乳の飲みもいいとのことだったので、寒冷対策として期待しています。

一方で使うポイントとしては、

①汚れたままで入れない

 個室に入れるので汚れたままでは臭いがこもります。また、子牛を舐める、体表を刺激することで免疫の吸収が活発になるので、まずは子牛を拭いてから入れてあげましょう(写真2)。

 

写真2:子牛をタオルで拭く。
写真2:子牛をタオルで拭く。

 

②長時間入れたままにしない

 長期間温風にあてると脱水症状になる可能性もありますし、初乳の給与は生後12時間以内に適量を給与する必要があるので、6時間をめどに使用するのがいいと思います。

 

体を冷やすと体温を上げるためにエネルギーを必要とするだけでなく、子牛のお腹を冷やすと免疫システムがうまく働かなくなり、呼吸器や消化器の疾病にかかりやすくなります。

今年の冬は「子牛を乾かして温める」ことに注目してみましょう。

※ホクレンでは冬期間の分娩直後の子牛の寒冷対策を支援する助成事業を実施しています。