GNSS(※1)をもとに設定経路を自動走行する自動操舵システムが普及し、近年、RTK(※2)の補正信号を活用した高精度な作業も行われています。自動操舵のメリットを飼料用トウモロコシの播種作業で検証したので紹介します。
※1.全球測位衛星システム。GPS等の衛星測位システムの総称。
※2.相対測位と呼ばれる測定方法。
この記事は2022年2月1日に掲載された情報となります。
ホクレン営農支援センター 訓子府実証農場 畜産技術課
直線操作
初心者と熟練者が、それぞれガイダンス・自動操舵を使用した場合(以下、自動操舵)と使用しなかった場合(以下、手動操舵)で2往復の播種作業を行い、その直線操作の精度を確認しました。手動操舵では播種機のマーカーを目印に、自動操舵ではモニターが示すガイドラインを目印に作業を行いました。作業基準となるAB線を基準線とした時のずれを図1に示しています。トラクターの作業軌跡は、受信したRTK-GNSSの位置座標を毎秒ごとに取得し、そのデータを解析して作図しました。
手動操舵の場合、初心者では蛇行が大きく最大30cm程度ずれることがあり、株が隣接してしまったところもありました(写真1)。直線操作の精度が低下することで除草剤散布や収穫作業が煩雑になる可能性があり、畝数が少なくなり減収のリスクが考えられます。一方、自動操舵の場合は、初心者、熟練者問わず真っすぐ進むことができ、その精度は熟練者の手動操舵よりも高くなりました。
作業の軽労化
手動操舵で直進するには、マーカーを見て集中しながらトラクターを操作する必要があるので精神的に疲れます。精神的負荷の指標として用いられている唾液アミラーゼ活性(値が高いほど疲労度が大きいことを示す)を測定し、自動操舵と手動操舵での精神的疲労度を評価しました(図2)。初心者の手動操舵区では作業終了直後にアミラーゼ活性の増加が見られました。
自動操舵を導入することで、直進作業では初心者でも熟練者並みの作業精度を得られ、作業の軽労化を図れることが明らかとなりました。ただし、自動操舵の場合でも初心者は切り返し作業に練習が必要であると思われました。