この記事は2024年6月3日に掲載された情報となります。
JAようてい営農経済事業本部営農推進課
課長 木村 敏之さん(右)
係長 加藤 拓未さん(左)
5年前、馬鈴しょでJGAP団体認証を取得したJAようてい。取得に向けて取り組むなかで、どのような変化があったのでしょう。担当者に伺いました。
POINT
• 事務局が書類のひな形をつくって生産者の事務負担を軽減
• リスクの洗い出しで、危険を察知する習慣がつく
• 認証取得とは別に、GAPの取り組みは全生産者に必要
大手量販店の要請で認証を取得
馬鈴しょを主力品目として生産・出荷しており、一部を大手量販チェーンのプライベートブランド商品として出荷しているJAようてい。販売先より「第三者認証を取得してもらえないか」という要請があったことから、JGAP団体認証に取り組みました。
2018年6月に食用馬鈴薯生産組合の中でJGAP団体認証の取得に興味のある組合員を募り、説明会を行ったうえで手をあげてくれた組合員で「GAP団体認証取得グループ」を組織。JA全農・JA全中が事務局を務めるJAグループGAP支援チームの「JAグループGAP第三者認証取得支援事業」を活用して、認証に向けた取り組みをスタートさせました。
なにより大変だったのは、膨大な書類の作成です。JAようていは9町村からなる広域JAなので、各支所に担当者を配置。
事務局で書類のひな形を作って配布するなど生産者の事務負担が少なくなるように配慮しました。認証機関の審査を受けて合格したのは同年11月。30〜60代までの生産者17人で団体認証を取得できました(写真2)。
リスクの洗い出しは効果大
事務局を担ったJAようていの営農推進課、加藤拓未さんはGAPに取り組むメリットについて「遵守しなければならない法律や条例を勉強する機会ができ、再確認できたこと」だと言います。
生産者にとっては「普段の営農で気を付けなければならない点を洗い出すことで、危険を察知する習慣がつく」と感じたそうです。
たとえば自分の農場のマップづくり(図1)。ここはぬかるみやすいので要注意、この道路は交通量が多いから出るときに危険など、経営主だけが分かっていることを書き出して整理することで、家族や従業員への周知を徹底できます。
納屋や倉庫の整理整頓も進みました。先々代から置きっぱなしにしていた古い道具や、もう作っていない品目用の資材などを処分。
軽トラック1台分の不要品を捨てた生産者もいたそうです。農薬や肥料の置き場所をきっちり整理整頓したことで、在庫管理が容易になり、必要以上の買い物が減ったという声もありました。
GAPの本質は自分の農場を良くすること
Aようていが団体認証をスムーズに取得できたのはなぜでしょう。その理由の㆒つが2008年から毎年続けてきた「JAようていGAPチェックシート」の実践です(図2)。
圃場・防除・栽培管理・収穫作業・乾燥調製まで約70項目からなる独自のチェックシートをJAが作成し、全組合員に配布して、記入したシートを提出するよう働きかけてきました。
「以前は未提出の方もいましたが、いまは回収率100%です。回答はJAで集計し、達成率の低い項目などは生産組合の総会などでフィードバック。注意を喚起しています」と言うのは、営農推進課の木村敏之さん。こうした長年の取り組みが素地になっていたこともあって、認証審査をクリアしやすかった面があるのかもしれません。
「GAPの認証を取るのとGAPに取り組むのは、また別な話です。GAPの本質は自分の農場を良くすることなので、認証取得とは関係なく、自分の農場の見直しに活用することが大事です」と木村さん。
「認証の取得については、費用がかかるうえに事務負担も増えてしまうため、作物の単価が上がるなど、明確なリターンがあれば、もっと取り組みやすくなるはず」と加藤さん。
認証を取得する・しないではなく、GAPに取り組むことが大事だと強調していました。