この記事は2024年2月1日に掲載された情報となります。
北海道農業士協会 副会長 髙橋 義典さん( JAいわみざわ)
Profile:1979年生まれ。2004年に25歳で就農。
個人所有の17haで水稲、小麦、キャベツを生産するほか、
2011年に近郊の農業者5人で(株)タップファクトリーを設立し、
水稲の直播、小麦、大豆を共同作業。
2014年に農業士の認定を受け、現在、北海道農業士協会の副会長。
曾祖父から数えて4代目となる髙橋さん。個人経営の17haのほかに、地域の農業者5人で株式会社を設立し、60haを共同経営しています。個人と会社、二足のわらじで取り組む農業とは。
会社を立ち上げた経緯を教えてください。
髙橋:もともと近隣の5人で刈り取り作業や乾燥施設を運営していましたが、新たに出る土地は個人で買わず、共同組織で買い取ろうと法人化しました。これまで12年間で購入した農地は60ha。直播の水稲、小麦、大豆を作付けしています。それぞれ個人の土地も持っていますが、私が17ha、一番多い人で18ha、少ない人で16ha。みんなだいたい同じ規模です。でも年齢はバラバラで、最年長は私の一回り上。私は下から2番目の若いほうです。
作業の分担はほぼ決まっていて、耕起は誰、施肥は誰、防除は誰と、流れ作業でやっています。僕は種播機担当。個人の畑も共同の一部としてみんなでやるので、自分の畑も起こしたことがない。その代わり私が全員分の種を播く。個人で作業するのは移植の水稲とキャベツだけです。
共同作業をうまく進めるコツはありますか?
髙橋:私たちは、かしこまってミーティングすることはめったにないんですよね。「みんな会社のこと一生懸命やってるから、俺もやらんとな」と思ってもらえる感を出します。メンバーの中には農業委員やJA理事もいて忙しいですけど「タイムカードで管理して働いた分の金を払えばいいんでしょ」となったら良くないような気がします。
個人で作付けしているキャベツだけは、妻がメインで収穫作業していますが、ほかの作業はノータッチ。家族に負担をかけないための共同組織ですから、水稲や大豆の収穫は会社のコンバイン4台で一気に終わらせます。
思うように作業が進まない時はどうしていますか?
髙橋:昨年は猛暑でキャベツが生理障害を起こし、結局、廃耕になりました。これまで天気が悪くて拾い取りしかできない年はあったけど、一つも取れなかったのは初めて。肥料や防除のコストをかけてからダメになったので落ち込みましたよ。でも、自分が悪い時はみんなも悪い。「俺もダメだったよ」と仲間で話していると「来年また頑張るか」という気持ちになれる。よく苦しみは半分に、喜びは倍以上に、って言うでしょ。1+1は2じゃないんですよね。
農業は自分と家族の生活を支えるための仕事ではあるけれど、それだけじゃない。困っている生産者がいれば手を差しのべられるような地域の仲間づくりが、北海道農業を発展させる第一歩だと考えています。だから、僕らの会社はよそから収穫作業を頼まれたら断ったことはないし、引退する人には「あの人たちが耕作してくれるなら安心だ」と思ってもらえるようにしたい。先祖代々守ってきた土地を荒らすことなく、次の世代へ引き継いでいくための会社だと思っています。