この記事は2017年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
作物にとって「良い土」は、「作物の生育を阻害しない土」です。
「土づくり」とは、作物の生育を阻害する要因を取り除くことです。
良い土は、堆肥がたくさん入った土?
皆さんは「良い土」と聞くとどのような土を想像するでしょうか。「堆肥がたくさん入った土」「ミミズが多くいる土」と答える方が多いと思います。確かにこれらの土は生産性が高い場合もありますが、一方で「堆肥が入っていない土」が生産性の低い悪い土というわけでもありません。
それでは、作物の生育を阻害しない、生産性の高い「良い土」とはどんな土でしょうか。その具体的な目安を紹介します(表1)。
良い土の条件~物理性
1.硬さと厚み
作物の生育には、根を支えるための適度な硬さと厚みが必要です。それを確かめるには、実際にスコップで掘って確かめることも大切です。深さ約1mの土壌断面を作り、表層土(作土)と下層土(心土)の硬さと厚みを調べます(図1・表2)。
2.水分の保持と排水
一見矛盾しているような「排水が良く、水持ちも良い土」を満たす土のカギは、土の粒と粒の隙間の大きさにあります。排水に関わる大きな隙間と、水持ちに関わる小さな隙間をバランスよく持つ土(中粒質の土)は、適度な排水性と水持ちを合わせ持っています(図2)。
土壌断面の観察や、土でコヨリを作ることで、土の排水性と水持ちを調べます。
良い土の条件~化学性
3.土の酸性度(pH)
土壌の酸性度は、土壌中の養分や有害物質の作物への吸収されやすさ、微生物の働き等に影響を与えます。土壌は雨や施肥の影響により徐々に酸性化が進みます。土壌分析を実施して炭カル等の石灰質肥料を施用し、適切な に改良することが必要です(表3)。
4.土の養分
土壌中の適度な養分量は作物・養分ごとに基準があります。北海道施肥ガイドに「土壌診断基準値」として示されています。また、土壌の養分量(土壌分析結果)に応じて施肥することも大切です。(「北海道施肥ガイド2015」で関連情報を検索できます)
良い土を目指すための土づくり
土が高い生産力を持つには、4つの条件全てを満たすことが理想です。自分の圃場を良い土の条件に照らし合わせ、生育を阻害している要因があれば、優先順位の高いものから改善することが、良い土を目指すための土づくりと言えます。
ただし、圃場の物理性は土本来の性質に由来していますので、改善には有機物の継続施用や排水対策など大きな労力と時間がかかります。一方、化学性の改善は土壌分析を踏まえた酸性改良や施肥改善により比較的早く効果が表れます。良い土を作る第一歩として土壌分析を行い、並行して物理性の改善に長期的に取り組みましょう。
「土づくり=堆肥」と考えがちですが、堆肥を与えるだけで良い土の条件全てを達成できるわけではないことを理解していただきたいと思います。