この記事は2017年2月1日に掲載された情報となります。
大型の機械を扱う農作業は、常に危険と隣り合わせ。生産者一人ひとりに安全管理が求められます。今すぐにできる安全対策とは何か、先駆的な取り組みをしている幕別町の箕浦邦雄さんに聞きました。
箕浦邦雄さん
Profile:1949(昭和24)年、幕別町生まれ。約40h の畑で小麦、大豆、小豆、スイートコーンを生産する。農業経営のかたわら50 代で帯広畜産大大学院に進学。さらに岩手大大学院連合農業研究科の博士課程へ進み、57 歳になって「農業用トラクタ用水平方向サスペンションに関する研究」で博士(農学)の学位を取得。近年は、農業機械の保守点検や安全対策などの講師を頼まれることも多い。
●Safety
骨折やケガは数知れず
「農作業中の事故体験は数え切れません」と言う箕みのうら浦邦雄さん。これまで数々のケガを負ってきました。
車庫を建てようと仲間6人で太い角材を運んでいる最中、一人が足を滑らせたことからバランスが崩れ、角材が箕浦さんの足の甲を直撃。骨折しました。
トラックに作業機を横付けして肥料と種子を補給していたときに、足を踏み外してトラック荷台から転落。肋骨を折りました。
また、防除のスプレイヤーを折り畳もうとしていて指を挟み、近所の人が通りかかって助けてくれるまで、動けなかったこともありました。
農機を安全に使うための工夫
少しでも事故を防ごうと、箕浦さんは安全対策に取り組んでいます。
たとえば、トラックの荷台のアオリに滑り止めのテープを貼る。これだけで落下の危険がぐっと減少します。万が一に備えて、トラクターや倉庫内に救急セットを常備。消毒用のエタノールや打撲時に役立つコールドスプレーなども用意しています。
トラクターやコンバインには消火器も備え付けました。麦わらや雑草などが挟まって熱を持ったり電気配線がショートしたりして、火災が起きる危険があるからです。
トラクターに備え付けの工具箱は、使いやすい位置に付け直しました。もともとの場所はマフラーのそばでヤケドの心配があったからです。
保守点検も安全対策の一環
農機具の保守点検も重視しています。オイルやエレメントの交換日はシールに記入して貼り付けておけば忘れません。
「管理台帳に書き込む方法もありますけど、倉庫はホコリがかかるし汚れちゃう。貼ってしまうのが手っ取り早い」と箕浦さん。メンテナンスの際に必要なスパナのサイズまで、農機のボディに直接書き込んでいます。
箕浦さんは農機の改造まで自分で手がけますが、その際に気をつけているのは、徹底的に角を丸めること。
「鋭利な部分を削ってアールをつけると、手が当たってもケガしないし、服も引っかかりません」
金属の加工はムリだとしても、ゴムで縁取りをしたり、ネジの頭にプラスチックのキャップを被せるくらいなら誰でも真似できそうです。
危険を察知する能力を磨く
「昭和40年代の農業機械は手造りだから、パーツの角は全て丸められていました。でも今は鋼材が切りっぱなしで角張っている。コスト優先だからでしょう。僕はこれでよく売ってるなと思いますよ」
最近はトラクターのキャビンに作業機のコントローラーやらモニターやら装置がいっぱい付いて、外が見えづらくなっていることを危険視しています。
「安全な農機具がほしいと、みんなで声を上げていく必要があると思うんです。今後、機械を扱う女性が増えてくれば、きっとメーカーも真剣に考えてくれるのではないでしょうか」
農作業事故を防ぐには、作業時間に余裕を持って焦らないことが第一ですが、気になる部分からこまめに対策するのも大切。「意識づけですよ」と言う箕浦さんの言葉には説得力がありました。