この記事は2016年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
土壌診断によって圃場の養分状態を知り、圃場に合った肥料を選ぶことで作物の生産性が安定し、肥料コストの低減に役立ちます。
土壌診断は適正施肥の第一歩
土壌養分や有機物の投入量に合わせて肥料の施用量を決める「適正施肥」は、作物の収量・品質を安定させるとともに、肥料のムダ使いを減らし、肥料コストの低減にも役立ちます(図1)。適正施肥の基本となるのが、圃場の養分状態を把握する「土壌診断」です。
土壌診断結果の使い方
土壌診断は主に農協を通じて受け付けており、ホクレンが設置している「くみあい土壌分析センター」や、地域の土壌分析機関で分析されます。
ホクレンが提供する診断結果には、各成分の分析値とともに、「北海道施肥ガイド」で定められている土壌診断基準値との比較が示されます(図2)。
診断結果を基に、使用する肥料の成分・量を決めたり、必要に応じて炭カル等の土壌改良資材を施用します。土壌の養分状態は個々の圃場によって異なり、土壌の種類や過去の肥培管理によっても大きく変化するので、3~4年に一度は土壌診断を行うのが望ましいです。
土壌養分は蓄積傾向
収量だけを目標にすると施肥量は多くなりがちですが、過剰な施肥は食味や品質を低下させるおそれがあります。また、作物が吸収しない余分な養分は肥料のムダになるだけでなく、地下水の硝酸汚染など環境に負荷を与えるおそれがあります。
くみあい土壌分析センターの分析値の傾向では、ほとんどの作物でリン酸・カリが基準値以上の圃場が多くなっています(図3)。リン酸やカリが蓄積している圃場では、施肥内容を見直し、減肥することが可能です。
土壌診断による施肥改善の効果
① コスト低減
リン酸やカリが蓄積している圃場では、施肥量を減らしたり、リン酸やカリが低いタイプの肥料に切り替えることで、肥料コストの低減を図ることができます(図4)。また、堆肥や緑肥などの有機物を圃場に投入する場合は、有機物から供給される肥料成分量に応じて減肥することができます。
② 生育・収量への影響
ホクレンでは、農協や関係機関と協力し、全道各地区に「施肥防除合理化圃場」を設置し、各地区の実情に合った施肥防除技術の確認試験を行っています。リン酸・カリが蓄積した圃場で、北海道施肥ガイドに基づく減肥試験を継続的に取り組んでおり、リン酸やカリを減肥しても生育や収量に問題ないことが確認されています。
減肥に不安がある場合は、圃場の一部で試し、問題ないことを確認してから範囲を広げることをおすすめします。