農薬散布用ドローンQ&A

ドローンでの作業に必要なこと

キーワード:スマート農業

ドローンでの作業に必要なこと

誰でも飛ばせるの?操縦は難しい?ドローンに関する疑問について、スマート農業推進課の家納淳也調査役が解説します。

この記事は2020年10月1日に掲載された情報となります。

ホクレン農業総合研究所 営農支援センター スマート農業推進課 調査役 家納 淳也

ホクレン農業総合研究所
営農支援センター スマート農業推進課
調査役 家納 淳也

Q1 農薬散布に使えるドローンの種類は?

回転翼(ローター)の数が4個、6個、8個など、多様な機種が各メーカーから登場しています。搭載できる薬液の量も機種によってさまざま。離着陸まで全て自動の高性能なものから、直進だけ自動モードでマニュアル操縦が必要なものなど、性能もいろいろです。ドローン本体のほかバッテリー、充電器、機種によってはRTK関連の機材など付属品を含めると150〜400万円前後の価格です。

Q2 好きな時に飛ばせるの?

ドローンによる農薬散布は、航空法で禁止されている「危険物輸送」「物件投下」にあたるため、事前に国土交通省に申請が必要です。申請は少なくても散布予定日の10日前まで(土日祝日など閉庁日を除く)にオンラインや郵送などで行い、承認を受けなければなりません。メーカーや販売店によっては申請を代行してくれたり手伝ってくれたりする場合もあるようです。

Q3 素人でも操縦できるの?

自動車なら運転免許を取得すると、どのメーカーの車も乗れますが、農薬散布用ドローンの場合は機種ごとにメーカーや販売店が行う教習を受けなければなりません。オペレーターとして認定を受けるには原則として10時間以上の飛行経験を積む必要があり、教習は講義も含め短くて3日、長くて5日間。1人につき15〜20数万円の費用がかかります。

Q4 自動航行の仕組みは?

マニュアル操縦の機種はプロポ(コントローラー)での操作が必要ですが、最も高度な自動航行の機種では離陸から着陸までスマホのボタン操作だけ。あらかじめ圃場を測量して登録しフライトプランを作成します。飛行ルートを決め、速度、高度、散布水量などを設定すると、あとは全自動。薬液がなくなると指定の場所に戻ってくるので、タンクを積み替えると、薬液が切れた場所から再スタートします。

Q5 承認を受けた後の手順は?

国土交通省から承認を受けた後、実際に散布するエリアや日時が決まったら「飛行情報共有システム(FISS)」へ飛行計画を入力する作業が必要です。当初は散布エリアを地図上に詳しく登録しなければなりませんでしたが、今は市区町村単位の簡単な入力で済むようになりました。情報を共有できるシステムなので、ほかの無人航空機の飛行予定も確認できます。

Q6 守らなくてはならないルールは?

航空法で「空港周辺」「150m以上の上空」「人家の密集地域」は飛行禁止空域に指定されています。以前は操縦者のほかに補助者(ナビゲーター)の配置が求められましたが、人が入れない立入管理区画を設定するなど条件が整えば補助者を頼む必要はなくなりました。農林水産省で定めた「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」や国土交通省で定めた「無人航空機飛行マニュアル(空中散布)」などを参考にしてください。

(農林水産省安全ガイドライン)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/attach/pdf/120507_heri_mujin-132.pdf

(国土交通省飛行マニュアル)
https://www.mlit.go.jp/common/001301400.pdf

Q7 農薬散布後は報告が必要なの?

国土交通省から承認を受けた場合、承認期間が終了するまで3カ月ごとに飛行実績の報告が必要です。メールもしくは郵送による提出、またはオンラインサービスで報告します。国土交通省航空局のホームページに、報告要領や報告書の様式が掲載されています。

国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_00044.html

Q8 備えておくべきことは?

誤操作や誤作動が絶対にないとは言い切れません。電線や樹木に接触して破損したり、回転翼でけがをさせてしまう事故なども起こり得ます。万が一の事故に備えた保険に加入しておきましょう。JA共済でもドローンを対象にした保険を用意しており、動産総合保険(機体の損害)と施設賠償保険(対人・対物賠償)の2種類の保険があります。保険の詳細は、お近くのJAまでお問い合わせください。

農薬散布用ドローン総合保険のご案内(パンフの表紙)

Q9 購入時の留意点は?

農薬は適期に散布しなければなりません。使いたい時に故障してしまうと病害虫による被害につながるケースも。緊急の場合、代替機の用意があるかどうかなど、アフターサービスやメンテナンスの体制も考慮して購入先を選びましょう。