搾乳牛の長命連産性改善を目的とした「クロスブリーディング」ですが、雄牛は肉牛として肥育されることから、その産肉性も重要です。雄牛(去勢牛)が肥育でどのような発育をし、枝肉になるのか、その調査内容を紹介します。
この記事は2021年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 畜産生産部 生産技術課
クロスブリード牛の肥育に挑戦
ホクレン訓子府実証農場はJA・関係機関と連携し、搾乳牛(雌)の繁殖性・耐病性・長命性の向上を目的としたクロスブリード(異種交配)の実証に取り組んでいます。この実証試験では、モンベリアード種やカナディアンエアシャー種の雌雄判別精液を使用しており、1割程度は雄子牛が生まれ、肥育向けに販売されます。しかし、クロスブリード牛の発育や産肉能力が不明のままでは、市場性や販売価格が大幅に低下しかねません。そこで、訓子府実証農場で生まれたクロスブリード(ホルスタイン種×モンベリアード種)雄子牛を肥育し、その産肉能力を調査しました。
二つの試験からみるクロスブリード牛の発育成績※
【試験1】同時期に生まれたホルスタイン牛とクロスブリード牛(各1頭)を同じ牛房で肥育し、約18カ月齢で出荷しました。クロスブリード牛はホルスタイン牛に比べ、胸最長筋面積や歩留基準値が良好でした。
【試験2】出生時期がおおよそ2カ月異なるクロスブリード牛(計3頭)を同じ牛房で肥育し、それぞれ17、18、19カ月齢で出荷しました。その結果、3頭平均は体重814kg、枝肉重量467kgとなり、試験1のホルスタイン牛と同等の発育と枝肉重量が得られました。格付等級はすべてB2となり、試験2においてもロース芯面積や歩留まりは良好でした。
※表1・写真1
発育および枝肉成績の比較
試験したクロスブリード牛と、牛舎と配合飼料が同一であるホルスタイン牛の発育成績を比較しました(図1)。また、道内の乳用種去勢牛(ホルスタイン牛)の枝肉成績と比較を行ったところ(表1右欄)クロスブリード牛はホルスタイン牛と同等以上の発育や枝肉成績が期待できる結果となりました。
ホルスタイン牛とクロスブリード牛の肉質の比較
試験1・2で得られたクロスブリード牛と、同農場産のホルスタイン牛の肉質を比較しました。試験時期、飼料摂取量、サンプル採取部位などの条件がやや異なることから明確ではありませんが、水分量や脂肪量、保水性や肉の硬さなどに差はありませんでした。
以上のことから、クロスブリード牛はホルスタイン牛と同等以上の産肉能力があると考えられます。しかし、まだ事例は少なく、次世代となるカナディアンエアシャー種との交雑牛を肥育する計画もあり、調査を継続する予定です。