水管理の省力化が期待できる「水田ファーモ」。その実証試験に参加した生産者の声を紹介します。
この記事は2021年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 米穀部 米穀総合課
担い手減少や労働力不足などが進み、今後の水稲生産基盤の維持、確保には米づくりの省力化が一層重要です。2016年開始の水稲低コスト省力化生産技術実証試験では、地域の気候や経営スタイルに適したさまざまな省力化栽培技術やICT機器の実証に取り組んでいます。本年の水田ファーモの実証試験について紹介します。
安価で操作が簡単な水田ファーモ
水田ファーモは、スマホを通じて水田の水位や水温をリアルタイムで確認したり、遠隔での給水・止水操作が簡単にできる便利なICT機器です。
従来機器に比べ安価(水位水温センサー2万3100円、給水ゲート5万2800円:各税込み〜メーカーHPより)で、設置が容易(電気工事や配線不要)、機器の通信費がメーカー負担なのも魅力です。
生産者の関心も高く、本年、全道63カ所で実証試験を行っていますが、既に道内で500台以上が使用されています(2021年ホクレン取扱実績。うち、センサーが約440台)。
実証レポート①
今金町 平原さん
(水稲14・5ha、大豆0・5ha、牧草3・2ha)
●水田ファーモは、昼夜の気温や水温に応じ自宅からタイムリーにゲートの開閉操作が可能なので、作業時間の削減以上に有益と感じた(作業時間の削減:10分×80日=▲800分/年)。
●専用アプリを開いてからゲート開閉指示画面への到達が速く、簡単に操作できた。
●遠隔操作により止水した後の現場確認で、ゲートに異物が挟まっていて完全に止水されていないことがあった。
実証レポート②
北見市 株式会社みその
(水稲21・2ha)
●圃場数が71と多いため、見回りの労力軽減を目的に試してみた。
●アプリは非常に見やすく、スマホに不慣れな人でも問題なく操作可能と思う。
●従業員2名で全ての圃場を見るのは大変なので、遠隔操作は非常に便利。離れた圃場に複数台設置することで、見回り時間の大幅な短縮が期待できる。
●機器導入で、目が行き届きにくい水田の水管理を正確に行えるので、品質の均質化につながると感じた。
●アプリからの給水ゲートの開閉操作がスムーズにできないことがあったので(3回目の操作で作動)、改善が必要と感じた。
その他の実施箇所での主な意見
●水位・水温データの受信(更新)頻度が高く、過去データの確認も含め、営農に役立つ。
●水管理の省力化に有効な機器だが、全圃場への設置は費用負担が過大。飛び地など、往復に時間を要する圃場への設置で大きな効果を発揮すると思う。
●水位と水温が分かるだけでも見回りの省力化につながり、栽培管理に活用できるので、センサー単体での導入を検討したい。
●給水ゲートの開き幅が限られるため、給水に時間がかかる。
●給水ゲートは全開か全閉の2択のみ。開閉調整機能があれば使い勝手が良い。
●当初、ゲートが作動しない不具合が生じたが、給水口とゲートの高さを合わせ、ホースのゆるみを是正することで解消された(写真2)。
●オープン水路で給水口に塩ビ管がなかったが、用水路から直接圃場に用水が流れる圃場に、塩ビ管を埋設し対応できた(写真3)。
次年度に向けて
本年の実証試験に協力いただいた生産者の皆さんからは、省力化や営農に役立つとの評価の一方で、前年は無かった通信機や給水ゲートの不具合などの報告がありました。今後、安心して使ってもらえるよう、ホクレンではそうした貴重なご意見をメーカーに届けていきます。
水田ファーモに興味のある方は、お近くのJAを通じホクレン各支所農機担当課、米穀担当課にご相談ください。