分娩監視装置の導入で、分娩時の事故を大きく低減できました。その結果をご紹介します。
この記事は2020年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 訓子府実証農場 畜産技術課 係長 砂留 光利
モバイル牛温恵導入で死産率は3分の1以下に
ホクレン訓子府実証農場では、分娩時の事故率低減を目的として2018年7月からモバイル牛温恵を導入しています。導入後2年が経過し、効果を検証するために分娩時における子牛の死産頭数・死産率について、モバイル牛温恵の導入前後で比較しました。
導入前1年間と導入後2年間で月別の死産頭数を比較すると、導入前は最大で月5頭の死産が発生していましたが、導入後は多い月でも2頭の死産にとどまっています(図1)。死産率(死産頭数/娩出子牛頭数)を比較しても、モバイル牛温恵導入後の死産率は4.3%と導入前の3分の1以下になり、大きく改善しました(表1)。なお、勤務時間外の分娩率は、装置導入後の方が多かったことを考慮すると(データ省略)、数値以上の効果があったと感じています。
事故の起きやすい夜間分娩で効果を発揮
装置導入前は母牛の血糖値により分娩を予測していました。夜間分娩の可能性がある場合は宿直者を配置していましたが、予測通りにはいかないこともあり、夜間の分娩に立ち会えずに死産となってしまうケースがありました。導入後は「段取り通報」を参考に宿直者を配置することで、夜間の分娩でもほぼ毎回立ち会うことができ、死産率の低下につながりました。
なお、図2は昨年9月19日に分娩した牛の体温変化の事例です。体温が低下した18日の0時15分に「段取り通報」があり、19日の3時55分に「駆け付け通報(一次破水)」がありました。この間、27時間40分経過しており、必ずしも段取り通報後24時間で分娩が始まるということではないため、「段取り通報」が出た母牛の状態は定期的に観察する方が良いでしょう。
分娩事故低減に役立つアイテム
当農場ではモバイル牛温恵を導入したことで下記のメリットを実感しています。
●余裕をもった分娩準備、精度の高い宿直の判断が可能となった(段取り通報)。
●その場にいなくても分娩開始を知ることができるため、子牛と分娩後の母牛両方に余裕を持ってケアできる(駆け付け通報)。
一方、分娩にはさまざまなパターンがあるため、死産率低下のためには分娩介助方法の検討も重要です。モバイル牛温恵は分娩開始を知らせるツールであり、これだけで事故のない分娩が約束されるものではありませんが、分娩事故低減に向けた一つのアイテムとして大いに活躍してくれると思います。
なお、詳しい内容は、ホクレン訓子府実証農場までお問い合わせください。