
この記事は2026年3月9日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所 営農支援センター 営農技術課
POINT
❶日射比例式潅水を使用した、隔離床養液栽培で高品質ななす生産が可能に。
❷「つるおろし栽培法」により良果率が向上し、作業の省力化が期待できます。
※「つるおろし栽培法」は全農による特許技術です。(特許第7623709号)
北海道内でなすの産地は限られており、道内で流通するなすのほぼ全量が本州産です。しかし近年、北海道でなすへの注目が高まっており、令和7年3月には先進的に取り組んでいたJA道央で、道内唯一のなす部会が設立されました。
背景には、夏の高温による作物への影響があります。なすは暑さに強く、高温による花落ちや生理障害が発生しづらいことから安定した生産が可能なため、夏秋どりハウス栽培における新しい品目の一つとして注目を集めています。
隔離床養液栽培と環境制御機器で広がる高品質生産
道内で少しずつ広がりを見せるなす栽培は、「隔離床養液栽培」という方法で、ビニールハウス内にヤシ殻培地を詰めたバッグ(通称グローバッグ)を並べてその上で栽培します。
グローバッグを用いることで、床土に直接定植をせず隔離するため、土壌病害のリスクを低減することができ、さらに土質を選ばずに栽培することができます。
また、潅水についても、環境制御機器を導入し、日射量に応じて自動で調整するシステム(日射比例式潅水)にすることで、必要な水分を過不足なく管理でき、みずみずしくつやのあるなすの生産につながります。
さらに、「PC筑陽」という単為結果性(受粉しなくても果実が肥大する性質)の長なす品種を使用することでホルモン処理や虫による受粉処理が不要になります。
従来の土耕栽培では病害抵抗性を持つ台木に接木した苗が一般的ですが、隔離床栽培ではその必要がなく、代わりにトマトの強勢台木を利用することでより多収が期待できます。
これらの技術の組み合わせにより、省力的かつ多収で高品質のなす栽培が実現しています。


台木品種と仕立て方法を検討
長沼研究農場では、2025年度よりなすの隔離床養液栽培の実証に加え、台木品種と仕立て方法の比較試験を実施しました。
●台木品種の比較
JA道央では「PC筑陽」に海外産のトマト強勢台木「カイゼル」を接いだ接木苗を使用しています。しかし「カイゼル」は海外産の種子であり、価格が高く安定供給が難しいことから、国内生産可能な「TTM‐079」を検討しました。
果実品質は「カイゼル」と同様で、問題なく使用することができましたが、収量性では「カイゼル」に及ばず、良果収量が低下しました。

●仕立て方法の検討
慣行のなす栽培では、主枝をある程度の高さで摘芯し、側枝を連続的に摘芯・切り戻しする剪定方法(以下、切り戻し)が一般的ですが、この作業はやや煩雑です。
一方、試験を行った「つる下ろし栽培法」(以下、つる下ろし)は主枝を伸ばし続け、側枝からは1果収穫後に根元から切り戻しを行うので、剪定作業が単純です(図2)。

トマトでは一般的ですが、なすでは事例が少ないことから、作業性および収量性について検証を行いました。
つる下ろしは切り戻しと比べて、総収量はやや劣る結果となりましたが、良果率は向上し、良果収量では同等の結果となりました。また、作業性において筆者の体感ではありますが、つる下ろしで作業性が向上したと感じました(表1)。

つる下ろしでは収穫作業や剪定作業が効率化され、作業時間の短縮につながったと考えられます。つる下ろしにすることで、省力的に、同程度の収量を得られることが分かりました。
暑さに強いなすは、北海道の新たな園芸品目の一つとして大きな期待を集めています。ホクレンでもなすの産地化に向けて、今後も試験や情報提供を継続していきます。