
この記事は2025年12月1日に掲載された情報となります。

北海道 農政部 生産振興局 技術普及課
課長補佐(担い手対策)
七社 貴郎(ななしゃ たかお)さん (右)
北海道 農政部 農業経営局 農業経営課
農業経営・企業連携サポート室長 主幹(経営指導)
髙谷 泰範さん(中央)
公益財団法人 北海道農業公社農業経営相談室
継承コーディネーター 名取 雅之さん(左)
自分が仕事を引退したあとのこと、考えているでしょうか。後継者がいる人も、いない人も、早めの対策が欠かせません。ここでは農業の経営継承にどのような方法があるのか、いくつかの選択肢について紹介します。
経営継承が進まない理由は?
一つは農業者の子弟が農業以外に就職するケースが多いことです。
今年6月、道の農政部が若手農業者と行った意見交換会では「親世代が子に就農を勧めない」という声もありました。「忙しいわりに所得が低い」「苦労するから」と就農意欲をそいでしまう場合もあるようです。
また、後継者がいても経営について親子間で話し合っていないというケースも少なくありません。
親が後継者である子どもに決算書を見せず、子が不安に思ったり、反対に後継者に自覚がなく収支に興味を持たなかったりと、親子間のコミュニケーション不足も理由にあるようです。
経営継承の選択肢とは?
農業は長男が継ぐのが当たり前という時代もありましたが、最近は息子だけではなく娘や孫など、後継者は多様化しています。
法人経営の場合などは従業員が継承する場合もあります。新規就農を目指す人に技術を教え、離農時に農地や設備機械を有償で譲る第三者継承という方法も増えています。
他にも法人化して株式を譲渡する方法、M&A(合併・買収)など、さまざまな手法があります。
2024年度の全道の新規就農者は農家子弟が新規学卒者・Uターンあわせて約250人、第三者継承の調査はありませんが新規参入者120人の半数程度と想定されます。
親族継承、従業員継承、第三者継承には、それぞれのメリットとデメリットがあります(表1)。

次の世代に引き継ぐものとは?
後継者に引き継ぐ財産は、農地や機械、施設や家畜など目に見えるもの(有形資産)だけではありません。目に見えないもの(無形資産)を引き継ぐことも大切です。
栽培技術やノウハウはもちろん、力を注いできた有機栽培やGAPの対応、築いてきた販売先やブランドなどを受け継いでほしいという経営者もいます。
第三者継承でネックになるのは住居です。双方の住居が必要となります。後継者へ住居を渡し、元経営者は老後を見据えて市街地に転居することも選択肢の一つです。
また、後継者に住居を販売し、元経営者が元気なうちは賃貸して住み続ける方法もあります。ただ名義変更を後回しにしてしまうと、元経営者が亡くなった後に相続トラブルとなるので事前の譲渡契約が必須です。
資産だけでも、想いだけでも経営継承は成功しない
