Profile:1972年生まれ。斜里に入植して4代目。約42haの農地に小麦、てん菜、でん粉原料用馬鈴しょ(9~10ha)の3品を中心に人参、大豆、2021年から大麦(はだか麦)を生産し、はだか麦は加工も行う。家族は妻と3人の息子、両親と愛犬、昨年から次男が後継者として共に畑に立っている。
この記事は2024年8月23日に掲載された情報となります。
「北海道農業協同組合中央会 農政対策部長賞」を受賞した山田さんは、知床の秀峰、斜里岳の麓で最新のスマート農業を駆使し、でん粉原料用馬鈴しょを生産しています。指導農業士として地域の担い手育成にも携わっている山田さんにお話を伺いました。
将来を見据えて新技術を導入
山田さんは、2016年の自動操舵トラクター導入を皮切りに、現在はインファロー技術、可変施肥のマッピングには、衛星リモートセンシングに加えレーザー式生育センサーを採用するなど、先駆的にスマート農業を取り入れています(写真1)。
今回の受賞理由の㆒つとなったインファロー技術(写真2)を導入したのは2015年。前年参加したフランスとベルギーでの研修時に、新しい技術を知ったとのこと。実際に植え付けや収穫の様子を見て「黒アザ病や腰折れ症状を解決できるのでは…」と考えたそうです。帰国後、植付時植溝内土壌散布機「アミーゴ」を購入、利用を開始しました。
「黒アザ病の早期予防につながっていることを実感します。導入は、でん粉原料用馬鈴しょだけでなく、てん菜や人参など根菜類を多く作付けする中で、土壌病害虫対策のひとつになればと考えました。良く言えば将来を見据えてとなりますね(笑)」
自分の経験を次に伝える
山田さんがスマート農業を導入して最も効果を感じているのが自動操舵です。
自分以外の人が操作しても熟練者並みの技術になることや、圃場をマッピングしてデータ化することで、作業時間が計算できるようになり、時間の管理がしやすく、作業の効率化が図れました。コスト面では上がってしまい検討の余地はあるものの、総合的なパフォーマンスが改善されました。
また、指導農業士としてこれからの担い手育成にも携わっている山田さん。「自分の経験値や失敗例をデータとして生かしてもらえれば、アドバイスにもなる」とその思いを話します。
斜里、清里、小清水の3町の清里地区指導農業士会の役員として、地域の農家を回って課題の掘り出しなどを行いながら、自らもSNSからの情報収集や、研修会に参加するなどの勉強を怠りません。
「次の世代へ、どうつなげられるかが㆒番の課題。実践から得た技術や試験・研究等で学んだ知識を地域に積極的に還元していきたい」
使う人に喜ばれるために
後継者不足や地域の空き農地受け入れによる作付け面積拡大の中で作業性を考えると、植え付けや培土を効率化することが「60代までの自分の課題かな?」と理想を教えてくれました。
また、品種については、栽培のしやすさだけではなく、ユーザーにも好まれるものができればと、期待しています。
「日頃の取り組みが評価されたと思うと、今回の受賞は素直にうれしいです。今までどおりに頑張っていきたいですね」