この記事は2024年6月7日に掲載された情報となります。
北海道立総合研究機構 酪農試験場
酪農研究部 乳牛グループ
研究主幹 谷川 珠子
Profile:2011年北海道大学農学院(博士課程)修了。酪農試験場において、
主に自給粗飼料を活用した泌乳牛の飼養管理に関する研究に取り組む。
POINT
●不消化繊維(uNDF<ユーエヌディーエフ>240)は草種や番草の異なる牧草サイレージの摂取量を推定できます。
●繊維含量が低く、高消化性の牧草サイレージの利用で飼料自給率の向上が期待できます。
イネ科牧草サイレージ(GS)は北海道の主要な自給粗飼料です。飼料中のGS割合を高められれば、濃厚飼料を減らし、飼料の自給率を上げることができます。
泌乳牛の飼料設計において、飼料中のGS割合を制限する最も大きな要因は、繊維(NDF:中性デタージェント繊維)の含量とその消化性です。
NDFはルーメン内での消化率が低いため、ルーメンの充満度を高め、摂取量を制限してしまいます。しかし、NDFの含量が同じでも、消化性が高いと、ルーメンの充満度が速やかに解消され、摂取量は高まります。
繊維の消化性を表す分画としては、低消化性繊維(Ob)やリグニン(ADL)がありますが、新たな指標として、ルーメン内で完全に不消化な繊維を表すuNDF240※が示されました。
そこで、GSの繊維含量およびuNDF240の含量が泌乳牛のGS摂取量に及ぼす影響を調べたので紹介します。
※ルーメン液で240時間培養しても消化されないNDF
繊維消化性と摂取量の関係
チモシー(TY)またはオーチャードグラス(OG)単播草地の1〜3番草から調製したGS12処理を用い、ホルスタイン種泌乳牛4頭で17日間の飼養試験を行いました。
GSの繊維消化性と体重当たり摂取量の関係を表1に示しました。予想どおり、GSのNDF含量が高いと、GS摂取量およびGS由来の可消化養分総量(TDN)摂取量は低下する関係にありました。同様にObやADL含量も、高いと摂取量が減る、負の相関がありました。
uNDF240含量は、ObやADL含量よりも摂取量と強い負の相関があり、uNDF240は草種や番草の異なるGSの摂取量を推定するのに有効と考えられました。
GSのuNDF240含量が低い、すなわち繊維の消化性が高いと、GS摂取量やGS由来のTDN摂取量は高まります(図1、図2)。GSのuNDF240含量が1ポイント低下すると、体重当たりのGS摂取量は0.04ポイント、GS由来のTDN摂取量は0.05ポイント増加する関係にありました。
泌乳牛の体重を680㎏とすると、uNDF240含量が1ポイント低いGSを用いたとき、1頭一日当たりのGS摂取量は0.27㎏、GS由来のTDN摂取量は0.34㎏増加することが期待できます。このTDN摂取量の増加は乳脂肪率4.0%の乳1㎏分に相当します。
繊維消化性の高い牧草サイレージの活用による濃厚飼料削減
この試験での飼料設計を基に、乾物給与量を1頭一日当たり24㎏としたときの濃厚飼料(圧片とうもろこし、大豆粕)の必要量を試算しました(表2)。飼料中GS割合が60%未満のときには、濃厚飼料給与量は原物で11〜14㎏/頭/日と多いですが、NDF含量が低く、消化性の高いGSを用いることで、濃厚飼料給与量は10㎏以下に削減できる可能性があります。
日乳量30㎏(乳量水準9000㎏)の泌乳牛の飼料設計において、NDF含量55%未満またはuNDF240含量10%未満のGSを用いると、飼料中のGS割合は60%以上となり、飼料自給率は56〜64%(TDNベース)まで高まります。
このようにNDF含量が低く、消化性が高いGSを収穫するには、1番草では出穂前の収穫が必要です。出穂前の収穫は、収量の低下や植生悪化の懸念など、課題は残りますが、飼料中のGS割合を高めるために、泌乳牛がGSに求める条件を紹介しました。
濃厚飼料価格が高止まりしている中、高消化性牧草の活用で濃厚飼料給与量を削減する取り組みへの参考になれば幸いです。