この記事は2019年4月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所 営農支援センター
主査 木谷 祐也さん
POINT!
❶天候の影響はみられず、障害物横では精度が低下しました。
❷RTK基地局から50kmまでは精度が安定していました。
トラクターの自動操舵では、RTK基地局からの補正信号で精度を高めるRTK-GNSS方式が使われます。その利用エリアは、基地局から半径20km程度といわれます(図1)。
しかし、この距離は経験によるものが多く、20km以上離れた場合や、曇りや雨、障害物の影響などは調べた例が少なかったことから、ホクレン長沼研究農場で調査しました。
乗用車にガイダンスシステムなどを設置し、測位精度を調査する地点に止まって2時間、毎秒の位置情報を記録してばらつきを調べました(表1、図2)。
また、ガイダンスシステムがRTK精度で活用できる状態(RTKフィックス)になるには、スマートフォンから補正信号の情報をガイダンスシステムに送信した後、一定の時間がかかりますが、その時間も調べました。
①環境による影響
長沼研究農場内で晴れと曇り(小雨)の時、また、障害物の影響を調べるため片側が樹木で覆われた地点(図3)でそれぞれ異なる日時に3回調査しました。
RTKフィックスまでの時間は、障害物の横でやや長くなりました(図4)。
測位精度は、「晴れ」と「曇り」はほぼ同じで天候の影響はみられませんでしたが、片側が樹木の場所では誤差が2倍程度になりました(図5)。
②基地局からの距離による影響
RTK基地局からの距離を至近距離(0.5km)と、10kmから60kmまで10kmごとに変えて異なる日時に3回調査しました。
RTKフィックスまでの時間は、基地局からの距離が40km程度まではおおむね30秒以下と短いですが、50km地点では100秒前後、60km地点では200秒前後の時間がかかりました(図6)。
測位精度は、50km地点までは測位した95%のデータが半径3cm以内におさまり安定しましたが、60kmでは不安定となり誤差が5cmを超える場合もありました。
このように基地局から50km離れるとRTKフィックスに時間がかかり、60kmでは測位精度が不安定になる結果となりました(図7)。
なお、今回はこのような調査結果となりましたが、実際には作業する場所の環境条件で精度が変わることが有り得ます。また、求められる精度も作業によって異なりますので、それらも踏まえて参考にしていただければと思います。