この記事は2018年8月1日に掲載された情報となります。
農作業に慣れていない人をパートとして雇用する場合、どのようなことに気をつければいいのでしょう。地域の生産者と農協が協力して協議会をつくり、人材の募集とあっせんを行っているJA道央江別営農センターで教えてもらいました。
人材雇用確保事業
江別運営協議会
会長 桐生 和則さん
JA道央 江別営農センター
営農振興課 営農振興係
後藤 真由美さん
健康状態を事前に確認
JA道央江別営農センターでは、約20年前から生産者と農協が協力して協議会を組織し、パートを募集しています。応募者を面談して登録後、農協職員が生産者のニーズとパートの勤務希望を調整して、必要な日に必要な人数をあっせんする仕組みです。
現在、人手を求める生産者が約110名、仕事を求めるパート希望者が学生含めて160名ほど登録しています。
「なかには経験15年以上のパートさんもいますが、今年初めての新人さんもいます。農作業は健康が第一。毎年春には必ず説明会を実施して、健康診断をいつ受けたか、持病はあるか、薬を飲んでいるかなどを記入した登録用紙を提出してもらっています」と話すのは、調整員を務める後藤真由美さん。事前に、緊急時の連絡先も確認しています。
熱中症を防ぐために
熱中症は夏場の大きなリスクです。生産者の一人で、協議会の会長をしている桐生和則さんは「新人さんは農作業に慣れたベテランさんと同じ扱いはできない」と話します。
「最近は少なくなりましたが、新人のパートさんは初日に具合を悪くすることが多かったんです。たとえば除草作業など、ベテランのパートさんについていこうと頑張り過ぎたりトイレを気にして水分をとらなかったり。気づくと顔が真っ赤になっていた人も。外で働くことに慣れてない人には気を配ることが必要です」
休憩は2時間ごとに15分のルールですが、暑い日はもっとこまめに水分をとるよう呼びかけています。
特に、30度を超える真夏日の予報の時は、事務局から熱中症防止のファックスを送信するなどの注意喚起を登録生産者へ行っています。
また、新人パート向けの説明会では熱中症の予防法を大塚製薬株式会社の方に紹介してもらっています。作業中は水分と一緒に塩分を補給することがポイントだそうです。
ケガや交通事故にも要注意
農作業中のケガで多いのは、刃物で手を切ってしまうケースです。ブロッコリーの収穫などの場合、最初は慎重でも、慣れてきたころに指を傷つけてしまいがち。登録生産者には鎌や包丁をこまめに研ぐように依頼したうえで、労災保険の加入も義務づけています。
また、行き帰りの車の運転も心配です。「特に朝は遅刻しないようにスピードを出してしまう人がいるので、遅れるようなら電話さえもらえればムリして急がなくていいから、と伝えています」と桐生さん。以前、朝に道路脇のゴミ箱に車をぶつけてケガをする単独事故があったので、来るはずのパートが来ていない場合は必ず確認するよう生産者に指導しています。
雇用する側の責任を意識づけ
協議会では雇用する側の責任をしっかりと意識してもらおうと、登録生産者向けの説明会も毎年開催。
圃場や作業場には必ず簡易トイレを用意すること、日陰で休憩できるスペースを確保すること、機械の操作やトラックの運転、高所作業など危険をともなう仕事はさせないなど、ルールを厳しく徹底させています。
また、8時間以上の勤務も禁止。たとえパートが「毎日来たい」と頼んだとしても週に1日は必ず休ませる決まりです。
年末には生産者とパートが一堂に集まる慰労会を開催する他、パート登録者からアンケートを集め、約束事がしっかり守られていたかを確認しています。
「パートの皆さんには青空の下ですがすがしく作業する気持ち良さを感じてもらいたいです。事故があるとそれどころではなくなりますからね」と桐生さんは話します。
パートの皆さんに安全に働いてもらえる環境を整えることは、今後、人材確保の観点からもますます重要になっていくに違いありません。
リスク回避のワンポイント情報1
熱中症に「牛乳」
熱中症に強い身体をつくるには、体温調節の鍵となる血液量を増やすことがポイントです。血液量が増えると、皮膚に血液を集めて放熱する働きが高まる他、血液から汗をつくり、その蒸発によって体温を下げる働きが活発になるからです。
血液量を増やすには、身体を動かしたあとに、たんぱく質と糖質を多く含む牛乳を摂取するのがオススメ。農作業の後には意識して牛乳を飲むようにすると、血液量が増加して熱中症リスクを効果的に抑えることができます。
大量に汗をかく農作業中は水分と塩分を補給できるスポーツドリンクが効果的ですが、普段から熱中症に強い体をつくるには「運動+牛乳」の組み合わせがオススメです。
出典:Jミルク資料
応急手当
熱中症の症状が出たら、以下の応急手当を実施してください。
❶涼しい場所に運び体を冷やす。水をかけたり、濡れたタオルを当てて扇ぐ。
❷0.2%の食塩水あるいはスポーツドリンクなどで水分を補給する。
❸回復しない場合は救急車を要請し病院へ。回復した場合も、容態が急変することがあるので、できるだけ病院へ行き、治療を受ける。