この記事は2024年8月1日に掲載された情報となります。
澤井 賢治さん(右から2番目)を囲んで
左からJA道央の小林 秀さん、成田 基さん、佐藤 育愛さん。
生産者も求職者も無料で利用できる1日農業バイト「デイワーク」のアプリ。上手に活用すると、繰り返し来てくれるリピーターが増えるそうです。3年前から利用している江別市の澤井賢治さんにお話をお聞きました。
POINT
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働く人の不安を解消する配慮が大切
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楽しく働きやすい環境を作ることでリピーターにつながる
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アプリの評価も参考に働く環境を改善していく
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リピーターを増やすことで新人募集の必要がなくなる
JA紹介のパート登録者が減少
12haの畑で小麦・キャベツ・はくさい・レタスを生産している澤井賢治さん夫婦。専属パート2人を雇用していますが、7〜9月末までの収穫最盛期には更に1日4人ほどの人手が必要になるそうです。
従来はJAの無料職業紹介事業を通じ確保していたものの、登録者の減少で2021年は2人確保するのがやっとの状況に。そこで、残り2人を1日農業バイト「デイワーク」で募集してみることにしました。
アプリに登録し、求人情報を入力して公開すると、30分もしないうちに次々と応募が届きました。苫小牧や小樽の人もいましたが、交通費を㆒律に設定したため、通勤距離の近い順に決めました。
また来てもらうために
採用面接もなく応募しやすい反面、雇う側はどんな人が来るのかという心配はないでしょうか。
「たぶん働く側もどんな農家なんだろうと不安だと思うから、僕は前日に『明日よろしくお願いします』とメッセージして、当日は国道から圃場へ入る地点に立ってワーカーさんの車を待つようにしました」
澤井さんの求人は8〜16時の実働7時間。その日働くスタッフが揃ったら、㆒人ずつ自己紹介して緊張をほぐし、収穫作業の手順を説明します。
「包丁を使うので、注意事項は新人さん含めて全員に必ず伝えます。専属のパートさんには新人の指導役をお願いして、常に目を配ってもらいます」
未経験の人がほとんどなので、どうしても作業効率が低下しますが、新人が加わることでベテランが張り切るなどの相乗効果もあるそうです。とはいえ毎日違う人が来るとなると、指導役の負担が大きくはないでしょうか。
「うちはもう新人の募集をしなくても、リピーターだけでほとんど間に合うようになりました。アプリを使い始めた1年目はいろんな人に来てもらいましたが、メンバーを限定して募集する仕組みがあり、今は15人ほどのワーカーさんがそれぞれの都合に合わせて来てくれます」
リピーターの年齢は50代から大学生まで。6割が男性で、江別市内のほか、石狩や札幌から通う人もいるそうです。
働きやすい環境づくり
澤井さんはアプリ上の評価の書き込みを参考に、次のような点に気を付けています。
「副業の人も多いので、プライベートなことは本人が話してくれるまで、こちらからは絶対に聞きません。また、屋外の仕事に慣れてない人のため、こまめに休憩を入れるようにしています」
その日の収穫予定を七つのブロックに分けて目印を立て、ひとつのブロックが終わるごとにひと息つけるように配慮しました。
畑のそばには仮設トイレを設置して、朝昼晩と3回清掃。泥汚れもすぐに洗い流せるように水のタンクも用意しています。
より時給の高い求人もある中で、澤井さんの農場を選んで繰り返し来てくれるのは、こうした点が働きやすいと評価されているのかもしれません。
「なるべく楽しい雰囲気で仕事して、また来てもらう。そしてだんだん作業に慣れてもらう。そんな関係がつくれたらいいですよね」と澤井さん。もう人手不足で慌てることはなさそうです。
JAも側面からサポート
1日農業バイトは生産者の直接雇用とはいえ、JAもサポートを惜しみません。管理者として管内のデイワークの利用状況を把握。求職者に安心して働いてもらうため、労災保険加入の確認や仮設トイレの斡旋などの支援を行いました。JA道央の営農企画振興課、成田基さんはこう言います。
「2023年度、管内のデイワークの活用状況は、6881人の求人に対し、応募が9390人。マッチング率は91%に達しました。生産者の登録件数は現在152件ですが、まだ増える余地があると感じています」
アプリの活用がコロナ禍と重なり、リモートワークや副業など働き方が大きく変化したことも好調なマッチングに影響しているのかもしれません。
「求職者は地域の消費者でもあります。農作業を通じて地域の農業のサポーターになってもらえたらいいですよね」と成田さん。その思いは生産者の澤井さんも同じです。
「うちはワーカーさんにその日収穫した㆒番いい野菜を持ち帰ってもらうようにしています。だって家族に自慢して、おいしく食べてもらいたいからね」