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展着剤の上手な使い方

キーワード:品種技術展着剤肥料

展着剤の上手な使い方

 

この記事は2018年6月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 肥料農薬部 技術普及課

 

POINT!
❶展着剤は、作物に対する薬液の濡れ性を向上させるなど、農薬の効果を最大限発揮させるのに役立ちます。
❷展着剤の添加量は、作物と散布する薬剤などによって加減が必要です。

 

展着剤とは

農薬は、その成分が病害虫や雑草など防除の対象に到達して効果を発揮します。しかし、作物や害虫は水をはじきやすい構造を持つものが多いため、薬液がうまく付着しなかった場合、十分な効果が得られないことがあります。

展着剤は界面活性剤が主成分で、散布する薬液の濡れ性(濡れ広がりやすさ)を向上させて付着量を上げるなど、物理的性質を左右する重要な役割を果たします。

※界面活性剤〜界面(二つの物質の境の面)に働いて、性質を変化させる物質の総称。水と油のように本来は混じり合わないもの等を混ぜ合わせるのに役立つ。代表的なものは石鹸。

そのため、作物などに薬液を必要量付着させ、効果を高めることを目的として使用されています(図1、写真1、表1)。

 

図1.展着剤の働き(イメージ)
図1.展着剤の働き(イメージ)

 

写真1.展着剤の有無による小麦の穂の濡れ性の違い
写真1.展着剤の有無による小麦の穂の濡れ性の違い
左:水+色素
右:水+色素+まくぴか(5,000倍)
※ホクサン(株) 技術資料より

 

表1.主な展着剤の種類と特性
表1.主な展着剤の種類と特性
(川島2014、展着剤の基礎と応用、クミアイ農薬総覧2018より一部加筆)

 

今回は展着剤の上手な使い方を紹介します。

 

展着剤の上手な使い方

作物などへの薬液の付着量は、作物自身が持つ濡れ性と、散布する薬液の濡れ広がりやすさによって変わります。そのため、展着剤の添加量はその作物と散布する薬剤によって加減する必要があります(図2)。

 

図2.作物の濡れ性と展着剤の必要量
図2.作物の濡れ性と展着剤の必要量

 

ただし、濡れの良い作物に対しては添加量が多すぎると薬液がしたたり落ちる(ランオフ)可能性があるため、注意が必要です(図3)。

 

図3.ランオフのイメージ
図3.ランオフのイメージ

 

また、薬剤にも界面活性剤は含まれており、製剤によってその量は異なります。そのため、製剤によって添加量を加減する必要があります(図4)。

 

図4.製剤の種類と展着剤の必要量
図4.製剤の種類と展着剤の必要量
※薬剤によって異なる場合があります。

 

展着剤使用時の留意点

展着剤は、作物によってはランオフや、高温などの気象条件によっては薬害の原因となる可能性があります。

また、展着剤の効果を過信せず、強風時や降雨直前の散布は避けるなど農薬散布の基本を徹底することが重要です。

加えて、薬剤によっては展着剤を添加してはいけないものや、専用の展着剤を必要とするものがありますので、製品ラベルなどを事前に確認の上、使用してください。