この記事は2017年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
POINT!
堆肥を施用する目的を明確にし、目的に合わせた堆肥を施用しましょう。
良い堆肥=完熟堆肥?
「堆肥は必ず完熟させる」、「堆肥で土がホクホクになる」。
堆肥にこんなイメージを持つ方は多いですが、堆肥を施用するだけで必ず良い土の条件を満たせるわけではありません。また、必ずしも完熟でないといけないわけでもありません。堆肥の効果を最大限に発揮する方法を紹介します。
堆肥の効果のあらわれ方と土の条件
堆肥で期待できる効果は、主に
①養分としての効果(多量要素や微量要素、緩効的な肥効など)
②安定した有機物としての効果(土の物理性改良、保肥力増加など)
③生物の供給源としての効果
の三つです(表1)。
土づくりしたい圃場の性質・状態を把握することが、堆肥にどんな効果を期待するかの決め手になります。
養分としての効果のうち、多量要素と緩効的な肥効は土の条件に関わらず効果が期待できますが、微量要素としての効果は、水田では灌漑水から微量要素が供給されるためあまり期待できません。
また、安定した有機物としての効果の大きさは土壌中の有機物の量で異なり、有機物が少ない圃場で効果が期待できます。有機物の量は厳密には分析しないとわかりませんが、土の色(黒み)がある程度の指標になります。
生物の供給源としての効果は造成地のような極度に有機物の少ない土では期待できます。一般的な圃場ではすでに多くの生物が生息しているので、効果は小さくなります。
堆肥の種類と効果のあらわれ方
①炭素と窒素の比率(C/N比)
堆肥や有機物資材の効果のあらわれ方は、炭素(C)と窒素(N)の比(C/N比)によって決まります(表2)。
完熟堆肥のように炭素が少なく窒素の多い堆肥(C/N比 小)は、早く分解されるので養分効果があらわれやすいですが、土に有機物として蓄積しにくいため物理性改善には適しません。
逆にバーク堆肥のように炭素が多く窒素の少ない堆肥(C/N比 大)は、養分効果はあまり期待できませんが、分解が遅く安定した有機物として蓄積するので、物理性の改善を期待したい場合は、毎年施用すると効果的です。
②窒素飢餓に注意
C/N比が大きい堆肥や有機物資材を施用すると、微生物によって分解される時に土壌中の窒素が使われ、作物が使える窒素が不足し生育が抑制される(窒素飢餓)恐れがありますので、窒素施肥量を増やすなど注意が必要です。完熟堆肥が良いとされてきた背景には窒素飢餓を防ぐためもあると思われます。
良い土を目指すための堆肥施用
土づくりにあたっては、目的に合わせた堆肥の施用が大切です(図1)。
①土壌物理性の改善
安定した有機物としての効果を期待してC/N比が大きい(未熟)堆肥が適します。ただし、改善効果が実感できるまでには長期的な連用が必要です。
②土壌化学性の改善
C/N比が小さい(完熟)堆肥を施用することで養分供給効果が期待できます。施用した年から効果があらわれるので、北海道施肥ガイドに基づいた減肥を適切に行いましょう。