この記事は2023年6月1日に掲載された情報となります。
北海道立総合研究機構 花・野菜技術センター 研究部
花き野菜グループ 主査(花き) 大宮 知(とも)さん
Profile:岩手大学大学院農学研究科修士課程修了。花・野菜技術センター花き科、道南農業試験場、花・野菜技術センター花き野菜グループ、北海道原子力環境センターを経て2018年より現職。歌志内市出身。
●中生〜中晩生品種では定植日から出蕾(しゅつらい)まで赤色LED終夜照明を行うと、切り花長や分枝数が増加し、品質アップにより収益性が高まります。
北海道は冷涼な気候を生かした切り花産地ですが、近年は夏の高温が常態化し開花前進や品質低下などの問題を抱えています。トルコギキョウの6月植え秋切り作型では、定植後の夏期の高温や長日条件により低節位で出蕾しやすいため、切り花長が短くなるほか側枝数も減少し、切り花品質が低下します。
そこで、高温による早期出蕾対策を省力的に行うため、出蕾を抑制する効果が期待できる赤色LED照明による品質向上効果について調査を行いました。また、効率的な照明条件の検討や、販売額と費用の試算も行いました。
適用品種と照明時間
早晩性の異なる14品種について、定植から出蕾するまで約50日間、赤色LEDによる終夜照明を行いました。その結果、照明を行わない場合(無処理)より出蕾が遅れて到花日数が長くなりました(図1)。
そして、茎長と節数も増加するので分枝が増え、切り花品質が向上しました。早晩性にかかわらず効果は認められましたが、早生・中早生品種では切り花長がL規格に必要な70cm(図1の点線)を超えるものが少なく、高い品質を確保するには中生以降の品種を用いるのが有効でした。
なお、照明は当初17時〜翌朝9時の16時間行っていましたが、18時〜翌朝6時でも十分な効果が得られ、照明時間は終夜照明12時間が適当と考えられました。
育苗時追加照明の効果
中早生品種では照明効果が低かったことから、育苗時も照明を行って切り花品質が高まるかを調査しました。播種日から定植前日まで日没後3時間照明を行ったところ、中早生品種を含めて切り花長が伸びる効果が認められました(図2)。
中生以降の品種では定植後の照明だけで十分な切り花品質が確保できるので育苗時照明は不要ですが、中早生品種の品質向上を図りたい場合は、育苗時にも照明を行うことが有効です。
切り花販売額と費用の試算
得られた結果を基に産地での実証試験を行ったところ、中晩生の「グランハピネス」では、赤色LED照明により到花日数が約5日遅くなって切り花長および分枝数が増加しました。切り花の規格別割合では半数以上が2Lに達して品質向上効果が認められました(表1)。
ここで、規格ごとの平均単価を用いて販売額を試算したところ、10a当たり51万円増収すると推定されました。㆒方、LED照明に要した資材・費用を1年当たりで算出すると、電気代を含めても約6万5千円となりました。
赤色LED照明技術
トルコギキョウ品質の向上のための赤色LED照明技術を表2にまとめました。照明の設置方法など確認のうえ、秋切りトルコギキョウの高品質出荷にご活用ください。なお、この技術では照明資材として鍋清㈱製LEDライトDPDL-R-9Wを使用しました。