人材育成は農業経営にとって重要な課題ですが、どのように進めればいいのでしょう。JA職員の能力開発や酪農ヘルパーのコミュニケーション研修に携わる石田邦雄さんにお聞きしました。
この記事は2023年6月1日に掲載された情報となります。
有限会社石田コンサルタントオフィス
代表取締役 石田 邦雄さん
Profile:中小企業診断士として1988年に独立開業。現在は社会保険労務士などとして組織改革や人材育成などに携わる。著書も多く「産業カウンセリング」(駿河台出版社)、「豊かに働き、すてきに生きる」(中西出版)などがある。また、月刊誌「農家の友」では「人づくり」に関し連載執筆中。帯広市在住。
「教える」よりも「考える」、「学ぶ」よりも「気付く」
「部下をダメにする三つの鉄則」は「決して褒めない」「失敗をねちねち叱る」「無関心を貫き通す」です。これらを忠実に実行すれば、どんな人もやる気を失い離れていくでしょう。ですから、モチベーションを上げるには、これと真逆のことをすれば良いのです。
私は研修において「教える」よりも「考える」、「学ぶ」よりも「気付く」を重視しています。自分だったらどんな時にやる気が出ますか? 自らを振り返って考えれば、おのずと答えが出るはずです。
経営者は従業員の支援者になる!
経営者も従業員も、皆さん無限の可能性を持っています。まず、そこを自覚しましょう。そのうえで、従業員には自信を与え、自活、自立、自律と歩みを進めてもらえるようサポートします。経営者は従業員の「成長の支援者」なのです。
長く働いてもらうためには、将来の道筋を「見える化」しましょう
若い人は「ここにいても成長できない」と思ったら、さっさと辞めます。人の定着には「2年後にはこれ、4年後にはあれができる」など、将来の道筋を提示することが有効です。ポイントは「確保・育成・評価」がうまく機能しているかどうか。これからの農業は土づくり同様、人づくりも欠かせません。
家族経営だからこそ、日頃のコミュニケーションを大事に
型にはめるのではなく、その人の持つ「らしさ」を見つけて伸ばしてあげるようにしましょう。そのためには、相手に関心を持つこと、普段からコミュニケーションを大切にすることです。
これらは、家族経営の多い農業で、特に日頃から心掛けた方が良いでしょう。仕事のできる人は自分でやったほうが速いと思ってしまいがちですが、教えることで自分自身も成長します。「(仕事が)できる人」ではなく、「(人として)できた人」を目指しましょう。
人材のことで悩んだら、JAを活用することも
人材育成や雇用などで悩んだら、身近なJAを通じ、北農5連※JA営農サポート協議会が実施している「農業経営支援事業」を活用するのもおすすめです。
実は、私も「北農5連農業経営支援コンサルタント」という対外的呼称をちょうだいし、連携しながら「組織づくり」や「人財育成」のお手伝いをしています。また、「人づくり」については、その道の専門家ともいえる社会保険労務士などに頼るのも一つです。
※JA北海道中央会・JA北海道信連・JA北海道厚生連・JA共済連北海道・ホクレン
農業という枠を超えて、夢を語れる経営者になって欲しい
「国民の食を支える」という自らの仕事に誇りを持ち、夢を語れる経営者であってほしいと思います。そして、農業の枠にとどまることなく、物事をもっと幅広い視点から考えてほしい。私は生産者向けの担い手研修やJAの新人研修の講師を務めることがありますが、例えば、新規就農者とJAの新入職員が一緒に研修するような機会があっても良いのではないでしょうか。
組合員とJA職員がフラットな立場で協働できるようになる絶好の機会かもしれません。農業にこだわらず、中小企業大学校などでマネジメントやコーチングなどの研修に参加するのも良いと思います。