この記事は2016年6月1日に掲載された情報となります。
冬場、道内のスーパーに並ぶのは他府県産の野菜です。しかし、冬も北海道の野菜を食べたいという消費者は少なくありません。そうした声に応えようと、数年前からホクレンとJA伊達市・生産者が力を合わせ、通年栽培・通年販売の取り組みを始めています。
JA伊達市 女性部長
宍戸恵美子さん
ホクレンショップ49条店
田中義晴 副店長
ホクレンショップで道産冬野菜が大人気
「当店では3年ほど前から『冬も!やっぱり北海道野菜』という特設の売り場をつくって、北海道産の野菜を販売しています」というのは、ホクレンショップ49条店の田中義晴副店長。12月のレタスやリーフレタスに始まり、1〜4月はほうれん草、水菜、チンゲン菜、小松菜など葉もの野菜を販売しています。
「近隣の競合店では冬場はほとんど北海道野菜を扱っていないので、それを目当てに来られるお客さまからは『やっぱりホクレンさんだね』と言われることも多いです」。
これらの冬野菜、Aコープチェーン・北海道が「北海道野菜の通年販売に向け冬野菜を栽培して欲しい」と全道各JAに打診し取り組みをスタートさせたもの。その中で、JA伊達市では行政の支援を受けハウスを建てた62棟をはじめとして、無加温で育つ品種を選定。冬野菜の生産が行われています。
収穫した野菜はホクレンが買い取り、札幌市内を中心に各ホクレンショップおよび全道のAコープで販売。新鮮なだけでなく相場に左右されず、生産者の安定収入にもつながっています。
道産野菜の通年販売を目指して
冬野菜の取り組みを契機に、通年で安定した生産ができるよう、品目や時期など見直した作付計画に沿って栽培・出荷するハウスのモデル試験が今年から始まりました。
「これまでも生産者の方にお願いして、指定した品種の野菜をつくってもらったことはあるんですが、栽培については生産者の方に任せきりでした。今回はホクレンの農総研や苫小牧支所営農支援室およびホクレンショップの農産バイヤーも加わって、栽培品目から方法、出荷時期まで見計らいながら、生産者の方と一体になって取り組んでいるのが特長です」と話すのは、生活事業本部の川辺博史主査。
まずはJA伊達市の女性部長を務める宍戸恵美子さんのハウス1棟を通年で借り上げ、春からえだまめ、なす、スナップえんどう、きぬさやなどを試験的に栽培し始めました。
宍戸さんは「手がけたことのない品目をつくるのはおもしろいし、農総研の人が来て知らないことを教えてもらえるから自分たちのプラスにもなる。作れば全量買い取ってくれるのでありがたいですよ」と新しい試みに積極的に取り組んでいます。
生産と販売が一体となって取り組むメリット
作付けのスケジュールづくりや品種の選定、技術支援などはホクレンの農総研が担当します。
「ナスは今回、単為結果性という受粉の手間がかからない品種を選びました。ナスは道内ではあまり作付けがないので、ハウスを活用して道産なすの生産が増えるといいですね」とホクレン農総研園芸作物開発課の堀江幸生主査。播種や定植など要所要所で宍戸さんのハウスに足を運び、技術的なサポートを行います。
一方、JA伊達市の青果課販売係佐々木康行係長は「ハウスを使うので、えだまめやなすは道内の露地ものが出る前の6月頭に収穫、スナップえんどうは9月に播種し、露地ものが少なくなる冬の初めに収穫と、道内他産地と時期をずらして出荷ができる」と、道内他産地と時期をずらして出荷できるメリットに期待を寄せます。
JA伊達市、ホクレン、ホクレンショップ(ホクレン商事)などが連携した今回の取り組み。道産野菜のブランド力を背景に将来は北海道野菜の通年栽培が道内各地へ広がることで、多くの生産現場の収入を安定させ、価値を高めてくれる可能性を秘めています。