
この記事は2026年2月2日に掲載された情報となります。

JA新はこだて青年部
部長 小山内 慈(しげる) さん

JAオホーツク網走青年部
部長 森 竜太 さん
農業にとって大きな課題である農作業事故の撲滅を目指し、JAオホーツク網走青年部とJA新はこだて青年部は、地域を越えた連携による啓発活動を行っています。今回は、連携の経緯や活動内容、今後の展望について、それぞれの青年部部長にお話を伺いました。
「他人事」から「自分ごと」へ
森 JAオホーツク網走青年部(以下「網走青年部」)が農作業事故への取り組みを始めたのは2019年です。
きっかけは、同年に結婚した部員からの提案で、「農業は家族労働が基本であるため、農作業事故が起きてしまったら大切な家族が被害者や加害者になる可能性がある。
そんな悲しいことが起きてしまわないように、大切な家族の笑顔を守り、より良い農業経営を実現するために、安全作業のための知識を身に付ける必要がある」と部内で話してくれた内容が、心に響きました。
僕たちは家族で農業を営んでいる家庭が多いので、事故が起きれば大きな悲しみとなります。「大切な家族や仲間が事故の被害者や加害者になってはいけない」という思いが皆の共通認識となり、活動へとつながりました。
小山内 JA新はこだて青年部(以下「新はこだて青年部」)が農作業安全に本格的に取り組み始めたのは2024年からで、今年度から本腰を入れています。
道南地域は施設園芸が盛んで、特にハウス内での熱中症がよく発生します。実際に部員にも熱中症で倒れたり、危険な思いをした経験がある人が多かったので、ホクレン函館支所営農支援室に相談し、農作業安全に関する講習会を受講したことが取り組みの始まりでした。
森 私も最初は、農作業事故を「どこか遠い誰かの出来事」と思っていました。小山内さんもそういう感覚はありましたか?
小山内 うちの地域は、他の地域と比べて農作業事故が少ないとはいえ、実際には事故や死亡例もありました。
ただ正直、「農業は危険がつきもの」と思い込んでいたので、事故を聞いても「そうなんだ」と流していたと思います。今考えると恥ずかしい話です。
森 以前はニュースで事故の話を聞いても「自分には関係ない」と思い込んでいました。でも取り組みを進めるうちに意識が大きく変わってきました。
特に2022年の当青年部定期総会で、ホクレン北見支所営農支援室に基調講演をしていただいた際に見た事故の写真はショッキングでした。これが部員の皆にも強い印象を与え、意識が㆒気に高まりました。
小山内 私も講習会の後、役員同士で「安全への取り組みを始めた方がいいのでは」と話し合い、新はこだて青年部で活動を始めることになりました。
実際に事故の話を聞き、具体的な内容を知ったことで、「自分ごと」として受け止めるようになったのだと思います。
森 具体的なものを見て、より鮮明に自分ごととしてイメージできた感じですね。

コロナを乗り越えた活動
森 網走青年部の活動としては、講師を招いて勉強会を開いたり、フォーラムに参加したりしてきました。
小山内 コロナ禍は本当に大変でしたね。
森 本当にそうでした。ですが、2023年には農薬ドリフトの危険性を知らせるための啓発資材を作成し、組合員全戸に配布しました。
この年には青年部大会で活動内容を発表し、東北・北海道ブロック大会で優秀賞も受賞。さらに安全ステッカーの作成にも取り組んでいます。活動を進める中でJAをはじめ、さまざまな機関と連携し、活動の幅も広がりました。
小山内 新はこだて青年部では昨年、ヒヤリハット体験を共有するグループワークを開催しました。今年からは活動も増え、農作業安全の啓発動画も作りました。
仲間だから理解し合える
森 個人でなく、青年部として取り組むメリットとして、仲間から安全を喚起したほうが伝わりやすいというのがあると思っています。
網走青年部では農作業安全係を立ち上げ、部員が巻き込まれてしまった農作業事故を農作業安全係で調査しています。
農作業事故は、共通の敵。調査発表を部全体で共有することで、自分の家族や仲間の身に起こりうるものだっていうことが、伝わりやすいんですよ。
小山内 個人の努力には限界がありますが、青年部がまとまって取り組むことでその声が大きくなり、JAや行政にも我々の思いがより伝わりやすいと思います。
また、北海道農作業事故ゼロ運動推進研修会に参加したことがきっかけで網走青年部とつながり、「網走函館JA青年部農作業安全推進協議会」を設立できたことは、個人では到底できませんでした。
森 本当にそうですね。北海道の端と端で地域は違っても、「農作業事故を減らしたい」という思いは同じです。網走青年部としても、この活動を全道や全国に広げていきたいという思いがあり、㆒緒に取り組むことになりました。
小山内 網走と函館では農業の形態も異なりますが、㆒緒に活動することで安全対策への視野が広がったと感じます。
網走は大規模農業、函館は小規模で多品目栽培です。さまざまな農家に対応できる安全対策にもつながるかもしれません。また、自分たちにない考え方を学ぶこともでき、良い刺激になります。
森 二つの青年部が手を組むことで注目も集まり、発信力も強まりました。「気をつけよう」という声かけがより多くの人に届くといいなと願っています。
小山内 網走青年部と新はこだて青年部が㆒緒にやっていること自体、すごいことですよ。
継続が何よりも大切
森 まだまだ始まったばかりですが、続けていくことが大切です。生産コストの高騰など、今の農業を取り巻く環境が厳しい状況の中で、
青年部の活動を進めるのは簡単なことではありません。それでも農作業安全の取り組みは必要不可欠です。スローガンにもある「当たり前の毎日を守るために」という気持ちで、この素晴らしい活動を今後も続けていきたいと強く思っています。
小山内 せっかくできた網走青年部とのご縁を今後も大切にしたいです。また、農作業安全の活動も管内の組合員にさらに広げていきたいですね。
農作業安全の重要性を青年部だけでなく親父世代や先輩世代にも伝えられるか。「自分ごと」として考えてもらうことが㆒番重要であり、㆒番難しいと感じています。

<JAオホーツク網走青年部の取り組み>



<JA新はこだて青年部の取り組み>



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