この記事は2025年8月1日に掲載された情報となります。
株式会社Perma Future
代表取締役 池田 航介さん
プロフィール:静岡県出身。青果の卸売業を営む家に生まれ、明治大学 農学部在学中に起業。
現在、北海道大学 大学院 環境科学院に在籍中。
「No 農 No Life」の頭文字を略した〈ののの〉。農業に興味のある人と、お手伝いを求める生産者をつなぐ、新しいプラットフォーム(仕組み)です。
労働でも体験でもない「お手伝い」
—〈ののの〉とは何ですか?
半日は農業のお手伝いをして、残りの半日は観光やリモートワークをしながら滞在する「半農半X」の農業ワーケーションを提案しています。
雇用主が報酬を支払う「労働」ではなく、有料の「農業体験」でもない、その中間の「お手伝い」です。参加者は生産者の用意する宿泊場所に滞在させてもらう代わりに、1日3〜4時間、無償で農作業をお手伝いします。
参加者は利用料7,700円で2週間以内なら何泊でも泊まれる仕組みです。
—〈ののの〉をはじめた理由は?
私は大学で農学を学びましたが、座学ばかりで現場のことが分かりませんでした。そこで、友人と2人で農家をめぐる旅をしました。
「お手伝いするので泊まらせてください」とお願いすると、皆さん温かく迎えてくれたものの、どこも人口減で人手不足だと実感しました。
その後コロナ禍になって長野県のりんご農家さんからヘルプの連絡が来ました。
ちょうど大学の講義がオンラインに切り替わったこともあって、午前中は農業のお手伝い、午後からオンライン授業のタイムスケジュールで参加者を募ったら、20人くらい仲間が集まって…。実際、お手伝いを経験したら、みんな満足度が高かったので、農業ワーケーションの可能性を見出しました。

参加者はどんな人?
2023年7月のサービス開始から1年半で、全国で延べ650人が参加しました。約6割が20代で、首都圏に暮らす方が多く参加しています。学生・会社員・フリーランス・公務員など、さまざまな方が参加しています。就職して3〜5年目の若者が多く、その時期に地域への移住やネクストキャリアを考える方が多いのかもしれません。
移住や二拠点生活のきっかけに
—生産者が参加者を受け入れるメリットとは?
参加者は金銭的報酬なしで1日3〜4時間のお手伝いをします。都市部からの参加者が多く、農作業の経験が少ない方もいらっしゃいます。
作業効率は人によって異なりますが、皆さん熱心に草むしりなどに取り組んでくださいます。
農業や地域の暮らしに興味がある、地元の人と交流したいという若者が多いので、農業を知ってもらう、地域における関係人口を増やす効果は大きいと思います。
—どんな反響がありましたか?
㆒般的な観光旅行では地元の人と深く関わる体験はできません。交流を目的に来る参加者も多いので、生産者がどういう思いで作物を育てているかとか、地域の魅力とかを積極的に話してもらいたいです。
〈ののの〉のおかげで決心がついたと、地域に移住した人もいて、お試し移住の感覚で利用している人もいるようです。受け入れ農家さんからも「大変助かった」という声をいただいています。
—今後の展望は?
新規就農となるとハードルが高いですが、週末にお手伝いに行くくらいなら誰でも「農」に携われます。いろんな関わり方があると思うので、その敷居を少しでも低くしたいです。
いまJAむかわやJA新おたるの協力を得て取り組みを進めていますが、今後、企業の研修や福利厚生にも利用してもらい、誰もが農に関わるような社会を創っていきたいです。移住まではいかなくても、二拠点生活のような、終わらない関係が広がったらいいなと思っています。
詳しい内容は〈ののの〉公式HPをご覧ください。>>HPへ
受け入れについてのお問い合わせは、お近くのJAを通じてホクレン各支所営農支援室まで。
受け入れには何が必要?
Wi-Fiのある宿泊場所が必要です。生産者の所有する空き家や空き部屋があればベストですが、地域で活用できる施設などでもOKです。受け入れ先としてサイトに情報を掲載(写真1)するために初期費用38,500円がかかります。申し込みがあれば生産者に連絡が届き、実際に参加者を受け入れたときは1人当たり1日550円の利用料(保険料を含む)を支払います。全国の登録農家は現在130軒に広がっています。

北海道でも多くの生産者が受け入れ先として登録しています。