この記事は2025年6月2日に掲載された情報となります。
ホクレン農業総合研究所
食品検査分析センター
検査分析課 坂井 志帆
消費者に安全な農作物を届けるため実施している「残留農薬検査」。実際にどのように検査を行っているか、担当者に聞きました。
残留農薬検査とは、農作物や食品に残留する農薬の量を測定し、安全性を確認するための検査です。農薬は農作物の栽培過程で使用されますが、収穫後も微量ながら残留することがあります。
この微量な残留農薬が人の健康に影響を与えないよう、食品ごとに残留農薬基準値(以下、基準値)が設定されています。
ホクレン検査分析課では、北海道で使用されている、最大282の農薬成分を一度に検査できる方法などを用いて、年間約1500点を検査しています。
検査の流れ



Q.正しい検査結果を出すために注意している点は?
A.細部にわたり注意・チェックを徹底
収穫のピーク時には同じ種類の農作物が試料として各地から送られてくるので、取り違いがないよう試料ごとに異なるシールを貼って管理しています(写真1)。

使用する器具や溶媒も間違えないよう、ラベルなどを色分けして区別している他、交差汚染を防ぐため、手袋や器具は試料ごとの交換を徹底しています(写真2)。

そして、解析結果は必ず複数人でチェックをしています。
また、基準値や適用情報などは変更されることがあるため、消費者庁HPの施行通知などを毎日欠かさずチェックし、正確な検査結果を出せるよう努めています。
Q.基準値を超過したらどうなるの?
A.出荷停止など大きな負担が発生
ポジティブリスト制度が施行された2006年以降、基準値超過発生率は減少傾向にあるものの、0%だった年はありません。
残留農薬検査は出荷前検査です。基準値超過が分かった時点で、すぐに該当するJAに伝え、出荷停止につなげています。
もし既に出荷されていたら、作物の自主回収、廃棄、お詫びの広告を出すなど多額な費用がかかる他、産地のイメージダウンにもつながります。更に2021年6月からは、基準値を超過した農作物を自主回収した場合は、行政への届け出も義務付けられています。
なお、各事例においては、原因究明と情報提供を依頼し、ホクレンにフィードバックしていただいており、再発防止に役立てられています。
生産者の皆さんは、基準値超過の主な要因として考えられる以下のポイントに注意して、防除作業をお願いします。


Q.生産者やJAの皆さんにお願いしたいことは?
A.適切な試料の提出を!
検査を行う試料は、対象圃場から採取する量や部位など、細かい規定があります(図1・図2)。

圃場全体の評価となるよう、試料の採取はなるべく偏りなくランダムに行ってください。

重量5kg以上かつ、個数4玉以上必要です。(漬物用も含め)1玉5kg以上ある大きなキャベツでも4玉以上必要です。
この規定は、防除時の状況により、同じ圃場内でも農薬の残留量にバラつきが起こることが想定されるため、検査する農作物全体を反映した結果が出せるよう設けています。
試料の量は環境庁告示第75号(1996年10月29日)などに記載された量を参考に、生産者やJAの負担などを考慮して定めたものです。
提出された試料の量などが規定に満たない場合は正確な評価ができず、検査の信頼性にも影響してしまうため、規定に合った試料の提出をお願いします。
残留農薬検査を行うことで農薬の適正使用が確認され、生産者の皆さんは「胸を張って出荷できる」、消費者は「安心して購入できる」根拠につながります。
生産者やJAの皆さんのご理解とご協力をお願いします。