増えてる?減ってる? 鳥獣被害の現状

キーワード:アライグマエゾシカヒグマ狩猟野生動物鳥獣被害

鳥獣被害の現状

この記事は2025年6月2日に掲載された情報となります。

北海道環境生活部佐寒河江正さん

北海道 環境生活部 自然環境局
野生動物対策課 課長補佐
寒河江(さがえ) 正さん

 

エゾシカやヒグマが市街地に出没してニュースになることが増えました。農業被害も増えているのでしょうか。北海道 環境生活部 自然環境局に聞きました。

 

被害の8割がエゾシカ

—北海道の野生鳥獣による農業被害額はどのくらいですか?

2023(令和5)年度の農林水産業の被害額は63億6,900万円です。前年比で5億円以上増加しました。被害額については、2011年の約72億円をピークに徐々に減少傾向でしたが、2016年から横ばいとなり、2020年からは増加に転じています(図1)。

 

図1野生鳥獣による農林水産業被害の推移
図1.野生鳥獣による農林水産業被害の推移(海獣類による被害を除く)※1
2011年度をピークに減少傾向から、2020年度に増加に転じ、増え続けています。

 

—どの動物による被害が多いですか?

鳥獣別の被害額では、エゾシカ(81%)、ヒグマ(5%)、カラス(5%)、アライグマ(3%)、キツネ(3%)の順になります(図2)。被害額は、地域によってばらつきがありますが、全道的な問題となっており、影響は深刻です。

 

図2.2023年度鳥獣別被害金額の割合
図2. 2023年度 鳥獣別被害金額の割合 ※2
※1、2 北海道 環境生活部 自然環境局 令和5年度野生鳥獣による被害調査結果(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/higai.html参照)より作成

 

気候変動の影響により、雪が少なくなって冬でも自然の食べ物が取りやすくなっているようであり、「冬場にエゾシカの囲いわなを仕掛けても、エサにつられないので、なかなかわなに入らない」という声も聞きました。

被害状況にあった対策を

—農業者が取り組める対策は?

まずは電気柵の設置です。市町村を中心に地域協議会を組織して「鳥獣被害防止計画」を策定している場合、計画に基づく取り組みに対し国から交付金が支給される場合もあります。ただし柵は設置して終わりではなく、見回りや草刈りなどメンテナンスが必要です。

アライグマについては、家の床下や屋根裏、納屋や畜舎の壁の隙間などに住み着いていた事例もあるので、出入口になっている箇所を探してふさぐなどの対策が必要です。

—被害を減らしつつ、野生動物と共存していくためには?

相手が分からないと対策がとれないので、まずは被害の状況を的確に把握することが大事です。いつ、どこで、どんな作物が、どの鳥獣により、どのように被害を受けているか、その状況にあった対策を考えなければなりません。

動物によって有効な電気柵の高さも違います。可能であれば、森林の際(きわ)などを刈り払い、見通しを良くすることで被害を防止する効果が期待できます。近隣の農家さんで情報を共有し、足並みを揃えて対策に取り組むのが効果的だと思います。