良質な水稲種子生産への取り組み

異型株抜き取りの様子
写真1.異型株抜き取りの様子

良質な種子を安定的に供給するため、水稲種子生産者の地道な努力が続けられています。

この記事は2023年2月1日に掲載された情報となります。

ホクレン米穀部 米穀総合課

水稲種子生産には厳格な栽培管理が必要

北海道米は生産者、関係機関の取り組みの成果で、全国的にも評価が高まっていますが、それを支えているのが良質な種子の生産・供給です。道内では六つの水稲採種組合で水稲種子の生産が行われています。

良質な種子には、育成時の品種特性を備えていること、病害虫に侵されていないこと、発芽力が旺盛であること、異品種や夾雑物の混入が無いことなど、欠かせない条件があります。

そのため、水稲種子の生産では、厳格な栽培管理が必要となります。外見が他と異なる「異型」の稲などの徹底した除去、基幹防除2回必須など、考えられる予防的防除を全て行う徹底したフルコース防除の実施、ばか苗病発生防止への地域一丸となった圃場巡回、籾が損傷しないよう専用コンバインでの刈り取りや専用乾燥機での乾燥、収穫後の粒厚選別機での選別、異品種混入を避けるための生産者ごとの品種集約や品種名掲示、作業機等の分解清掃実施などです。

そして、異型や病害虫発生有無などを確認する2回の圃場審査や、生産された種子に対する発芽率などの生産物審査、異品種混入を調べるDNA鑑定も実施されます。

水稲種子生産の流れ
図1.水稲種子生産の流れ

良質な種子生産への努力

このように、水稲種子生産には、般の水稲生産に比べ、コストや手間も多く掛かります。加えて種子の品質が全道の水稲生産に影響することから、審査基準に耐える良質な種子生産が求められる心理的負担もあります。秩父別町水稲採種組合の中村純組合長は言います。

「水稲種子の生産では、播種段階から品種のコンタミがないよう確実な作業が必要で、育苗、移植、収穫まで、病害虫発生や異型の稲が無いか見回りを欠かさないなど、常に気を配っています。

 また、病害虫防除では、ドローンを使うなど省力化も図っていますが、育苗時から行う異型株などの抜き取りは全て手作業です。普及センターなどの協力で講習会を行い目合わせしながら、7月上旬と圃場審査前の8月上旬と中旬には、採種組合の仲間たちと巡回、抜き取りを行い、戸別でも田んぼに抜き取りに入ります。足下も悪く暑い中、大変つらい作業です。専用のコンバインと乾燥機で丁寧に収穫、乾燥した後も、約1カ月かけ共同で種子籾の選別を行っています」

水稲種子生産を担う中村組合長はそうした苦労と共にやりがいも大きいと感じています。

「北海道米生産の基盤となる、大切な種子を作っている責任があり、春先の育苗から種子の出荷まで手は抜けません。気苦労も絶えませんが、それだけに無事に良質な種子を生産できた時の喜びや達成感はひとしおのものがあります。苦労して生産した種子なので、生産者の皆さんにはどうか大切に扱ってほしいです」

種籾を確認する中村組合長
写真2.種籾を確認する中村組合長