「北海道米の新たなブランド形成協議会」では、良質米の生産と温室効果ガス(メタン)削減に向け、「ゆめぴりか」収穫後の稲わらの搬出や秋すき込み励行に取り組んでいます。
この記事は2022年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン米穀部 米穀総合課
環境への取り組みも重要に
「北海道米の新たなブランド形成協議会」は、生産者、JA、ホクレンほか、関係機関により構成される協議会で、「ゆめぴりか」のブランド確立に向け、精米タンパク値などの生産・出荷基準を設けるなど、良質米の安定生産を推進してきました。当協議会では、2022年度から収穫後の稲わらの搬出・秋すき込みの励行に取り組んでいます。
農林水産省が2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を発表。農業の生産力向上と持続性を両立する環境にやさしい農業に向け、化学農薬や化学肥料低減の目標が掲げられるなど、従来にも増して地球温暖化や環境への関心が高まっています。
このような動きを受け、北海道を代表するブランド米としての価値向上には、品質の確かさや安全・安心なことはもちろん、新たな付加価値として環境への取り組みも重要になっています。
温室効果ガス削減には稲わらの搬出や秋すき込みが有効
国内の農林水産分野の温室効果ガス排出量の3割弱は稲作が占めます(図1)。二酸化炭素の約25倍の温室効果があるメタンが主で、湛水(たんすい)した水田土壌が還元状態になり、酸素のない状態で活発に活動するメタン生成菌が、有機物を分解する過程で発生。稲わらのすき込みはメタン発生を高めることが分かっています(図2)。
この削減には、中干しで水田に酸素を与えることも有効ですが、道内では前歴期間・冷害危険期1※の中干しは低温の影響を受けるリスクもあります。そこで、春すき込みに比べ、約8割のメタンガス削減につながる収穫後の稲わら搬出や、約4割削減となる秋すき込み2※の励行に取り組んでいます。
搬出や秋すき込みすることで、メタンガス削減だけでなく良質米生産にもつながります。春すき込みは、稲わら分解のために窒素が取り込まれ初期生育に影響するほか、稲わら由来の窒素が生育後半に出て食味低下につながるなどの懸念もあるからです。
今後、段階的に実施率を拡大
2021年産米の稲わら処理に関する「ゆめぴりか」生産者へのアンケート結果では、半数近くは春すき込みで、搬出は5%、秋すき込みは46%の実施でしたが、2022年産で、搬出と秋すき込み合わせて7割実施を目標としており、2023年産で8割、2024年産では9割の実施を目指しています。
稲わら処理にあたっての留意点
収穫後の稲わらを水田に放置すると水田土壌の乾燥が妨げられます。生育や食味への影響を避け、温室効果ガス排出低減には搬出が望ましいですが(写真1)、透排水性の良好な水田では、秋すき込みも可能です(写真2)。なお、透排水性が不良な水田は、収穫後の溝切りなど、すき込む前に乾田化に向けた改善対策実施が重要です(写真3)。
土壌乾燥が不十分な状態で作業すると、秋すき込み時や春耕起時の練りつぶしで、透排水性が悪化し地温上昇や酸素供給を妨げるなど稲の生育に悪影響を及ぼします。