米穀の販売には、生産地から消費地への輸送が欠かせません。安定的な輸送力確保のため、人手不足に対応した輸送方法改善と、SDGsへの関心の高まりや低コスト化に応えるフレキシブルコンテナの取り組みを紹介します。
この記事は2022年6月1日に掲載された情報となります。
ホクレン米穀部 米穀総合課
輸送手段として欠かせないトラック輸送
北海道米は年間約57万tが生産され、約半数が道内で消費されるものの、多くは沖縄も含め道外に運ばれ消費されています。そのうち本会取扱分の輸送手段は約3分の1がJRコンテナ、残りはフェリーや貨物船等の船舶を使用していますが、生産地、消費地と駅(港)の間はいずれもトラック輸送が必要となります。
紙袋での輸送省力化も課題に
トラック輸送業界は、長時間労働や不規則な勤務体系など、他の産業と比べ厳しい労働環境であることから、近年、ドライバー不足が発生し高齢化も進行しています。このため、米穀の輸送に関しても効率化や省力化は大変重要な課題となっています。
米穀の輸送では、主にフレキシブルコンテナ(以下「フレコン」)(約1t)と紙袋(30kg)が使われています。フレコンによる輸送は、フォークリフトを用いた作業のため作業効率も良く、北海道米では8割程度を占めていますが(※)、紙袋も販売先からの要望で一定量の供給が必要です。紙袋を輸送する際は、ドライバーが一袋ずつ手積み、手下ろしの作業を行う必要があり、割増運賃を求められるなど輸送方法の改善が急務となっています。
※全道共販米穀(2020年産)のフレコン比率84%
パレチゼーション輸送の導入
そこで、あらかじめ紙袋を載せたパレットごと、フォークリフトでトラックに積み下ろしすることで、手作業による負担軽減を図るパレチゼーション輸送の試験を昨年から始めています(図1)。レンタルパレットを用いるため、JA所有のパレットからの置き換え等、各種課題を整理しながら導入に向け取り組んでいます(写真1、2、3)。
環境負荷を軽減するフレコンのリサイクル率向上へ
一方、気候変動や資材価格の高騰など、先行き不安な状況にある中、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みも必要になっています。
北海道米(本会取扱分)の米穀輸送で使うフレコンは年間約31万枚で、半数程度は再利用可能なリサイクルフレコンですが、回収、点検作業等の都合上、その他はワンウェイ(使い捨て)フレコンを使用しています。今後は環境負荷を考慮し、ワンウェイフレコンの使用を減らし、JA全農が全国段階で運用する、リサイクルタイプの全農統一フレコンの導入拡大を計画しています(写真4、5)。
全農統一フレコンは、紙袋での輸送を減らし輸送力を確保することや、全国段階での運用による回収の効率化、コストダウンを目的にJA全農で進めているものです。昨年度から道内でもJAの協力を得て充填(じゅうてん)、保管試験を実施しています。試験段階で特に問題は見られないため、2022年産で5千枚程度導入する予定です。置き換えが進めば、一割程度のコスト削減が期待されています。
米穀の安定した輸送力確保はもちろん、物流コスト低減による生産者の手取り向上と環境負荷削減など、今後もさまざまな取り組みを行っていきます。