北海道は今年、おおむね好天に恵まれ、10月25日現在の水稲作況指数は、108の「良」と発表されました。しかし、品質では夏期の高温や干ばつにより胴割粒や白未熟粒などが発生した圃場が多くみられました。中でも被害が多かった胴割粒の原因と対策を紹介します。
この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。
北海道農産協会 業務部 技監 竹内 稔さん
Profile:北海道岩見沢市北村生まれ。弘前大学農学部卒。1982年 北海道入庁。空知、後志、石狩、日高管内各農業改良普及センター並びに農業試験場等に普及指導員として勤務。担当作目は水稲。2020年より北海道農産協会勤務。
胴割粒の発生メカニズムと発生助長要因
「胴割れ」した被害粒は、精米する際に砕けやすくなり精米歩合が低下するなど、流通上、大きな問題となります。一般的には、立毛中(りつもうちゅう)に米粒が吸湿や放湿を繰り返すことや乾燥時における急激な水分低下などで発生すると考えられています(図1)。そのため、登熟後半から収穫期以降の生産管理が重要視されていました。
一方、道外の試験で、登熟初期の気象条件が胴割粒の発生に関与していることが示され、出穂後10日間の日最高気温、特に出穂開花後6〜10日目までの平均日最高気温が高いと特異的に増加することが分かりました(図2)。
本年の気象経過をみると、出穂後の7月下旬から8月上旬の最高気温が平年を大きく上回っており、発生リスクがかなり高かったことがうかがえます(図3)。
胴割粒の軽減対策
発生増加の要因(表1)を踏まえ、次年度に向け以下のことに留意してください。
①登熟初期の水管理と早期落水の回避
出穂直後から高温が予想される場合、地温を下げ高温状態を緩和することが重要です。そのため、出穂後10日間程度は湛水状態を保ち、用水に余裕がある時は「かけ流し」を行います(図4)。
また、根の活力を低下させないよう、登熟後半(穂かがみ期頃)までは土壌水分を保つようにしましょう。
②適期収穫
本年の収穫は地域によって、刈り取り適期からやや遅れたところが見られます。登熟後半の急激な籾水分の低下は、胴割粒のリスクを高めます(図5)。また、過熟な状態での降雨は、特に発生を助長させるので、刈り遅れに注意し、適期収穫を心掛けましょう。
③適正な乾燥調製
乾燥時の乾減率は毎時0.8%以下を心掛け、軽い胴割れがみられる場合は、乾減率を毎時0.5〜0.6 %程度になるよう乾燥温度を低めに設定します。また、籾同士の水分を均一化する二段乾燥や籾内の温度差が生じにくい遠赤外線乾燥方式も有効です。
④健全な稲体づくり
他にも、圃場内の生育ムラ解消や穂揃い性の向上、登熟期の適正な葉色維持や根の活力保持など、基本技術を着実に実施することが発生軽減につながります。
今年の胴割粒発生に関する詳しい分析が待たれますが、昨年、胴割粒の発生が目立ったオホーツク管内では、本年4月、その防止に向けた栽培マニュアルを試験場や普及センター等を中心に作成(図6)、水稲栽培講習会などでの情報提供で、生産者が意識的に取り組み、圃場での胴割れ発生低減につながった事例があります。それらも参考に、来年も高品質な北海道米生産に向け取り組まれることを期待しています。