水稲育苗ハウスを活用した高糖度トマトの栽培

水稲育苗ハウスを活用した高糖度トマトの栽培

カテゴリー:生産振興
実施年度:2016~2017年度
実施:函館支所営農支援室
対象JA:JA新はこだて(若松基幹支店)
協力関係機関:檜山農業改良普及センター檜山北部支所、せたな町農業センター

POINT
●水稲育苗ハウスへの高糖度トマト栽培導入による農業所得の向上

この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。

高糖度トマト導入で所得向上へ

JA新はこだて管内では、稲作をはじめ野菜・花き・酪農・畜産が行われていますが、後継者不足や地域の過疎化に伴う労働力不足など、多くの課題があります。

若松基幹支店では、基幹作物として水稲を作付けしていますが、地域振興策として、水稲育苗ハウスに新規作物を作付けすることで、ハウスの有効活用と農業所得向上、新たな地域ブランド創出による産地づくりを目指してきました。そのつに、ポリポットと塩水(日本海・海洋深層水)の利用による高糖度トマトの生産があります。しかし、ほとんどの生産者はトマト栽培の経験が無く、高糖度トマト生産の養液管理やハウス内温度管理の技術がありません。また、地域ブランドとして確立するには、市場ニーズの把握、ユーザーへの提案方法など、販路確保に向けた活動も必要です。函館支所営農支援室では、種苗園芸部門と連携して、栽培講習会で潅水装置の実演会を行うなどの取り組みを支援しました(写真1)。

栽培講習会の様子
写真1.栽培講習会の様子

地域ブランド「せたな潮(しお)トマト」の販売に至るまで

2016年の取り組み初年度から栽培期間中は定期的に調査・巡回し技術指導を行いました(写真2)。参加した5名の生産者も、個々で養液濃度などを試行錯誤しながら栽培した結果、生産技術の向上が図られ、2017年度の収量は、全生産者で前年よりも向上(図1)。更に3名の生産者は糖度8度以上の果実の比率も高くなりました(図2)。併せて町内の農業センターでは、高糖度トマト栽培に適した品種比較試験を行い、品種ごとの特徴を把握。「CF桃太郎ファイト」が、塩水を使用した養液栽培には最も適した結果となり、品種選定にも生かされました(図3〜5)。

栽培技術巡回の様子
写真2.栽培技術巡回の様子
生産者別トマト収量の年次間比較 ※生産者Fは2017年度のみ
図1.生産者別トマト収量の年次間比較
※生産者Fは2017年度のみ
生産者別の糖度8度以上の収量比率の年次間比較 ※生産者Fは2017年度のみ
図2.生産者別の糖度8度以上の収量比率の年次間比較
※生産者Fは2017年度のみ
収穫月ごとの収量(品種別)2017年度
図3.収穫月ごとの収量(品種別)2017年度
1株当たりのサイズと累積収量(品種別)2017年度
図4. 1株当たりのサイズと累積収量(品種別)2017年度
1株当たりの等級と累積収量(品種別)2017年度
図5. 1株当たりの等級と累積収量(品種別)2017年度

生産された高糖度トマトの販売先は、ホクレンの園芸開発課と連携し、札幌圏の量販店を選定。地域ブランド確立を目指して、塩水を潅水養液に使っていることを生かし、「せたな潮トマト」(写真3)の商品名称で出荷しました。また、生産規模拡大に向け、糖度計付き選果機を導入しJAの受け入れ体制も強化しました。

更に、近年は道外市場を中心に販売先を拡大しています。

せたな潮(しお)トマト
写真3.せたな潮(しお)トマト

着実に栽培規模が拡大

当初は5戸でスタートしましたが、栽培戸数は徐々に増えて、2019年度は10戸となりました。また、管内の全栽培株数も3800株からスタートし、2019年度は2万6000株と、6.8倍に拡大(図6)。取扱量は、栽培技術の向上などにより年次を経るごとに増加しており、取り組み当初は2.3tでしたが、2019年度は18.3tと約8倍に向上し、着実に伸びています。

今後は、安定販売に向けて、複数の作型を設けるとともに栽培技術の高位平準化を目標に、部会組織が丸となって取り組んでいきます。

取り組み生産者戸数と栽培株数の推移
図6.取り組み生産者戸数と栽培株数の推移