この記事は2025年12月8日に掲載された情報となります。

檜山南部米作振興会
会長 山田 智稔さん
檜山南部米作振興会では、地域の高齢化が進み、労働力不足が喫緊の課題となっています。さまざまな省力化技術を模索する中で、高い効果を実感できたのが「密播中苗」でした。現場での省力化効果について、同会会長の山田氏にお話を伺いました。
●密播中苗とは
育苗箱1箱当たりの播種量を通常の約2倍に増やし、植物成長調整剤(ウニコナゾールP液剤)を利用して育苗期間を中苗程度に調整します。田植え時には苗の掻き取り量を減らします。必要な苗箱数の削減や、コスト・労力の軽減が可能となる省力化技術です。
地域が協力し、省力化を推進
厚沢部町および檜山南部地域では高齢化や㆒戸当たり耕作面積の増加が進み、省力化が大きな課題となっています。
私自身も年齢を重ね、1〜2日なら多少無理もできますが、毎日の重労働は困難になってきました。仕事終わりには疲労から、ついウトウトと寝てしまう日々が続き、営農を続けていく難しさを実感していました。
こうした問題の解決に向け、振興会では湛水直播や高密度播種短期育苗栽培など多様な省力化技術を導入しましたが、生産量の安定化や他作業との兼ね合いから、なかなか普及には至りませんでした。
そうした中、2019年に道総研の新技術「密播中苗」をご紹介いただき、初年度は6名が試験的に導入しました。
省力化効果が実証されるとともに(写真1・図1)、密播中苗の有用性が広く認知され、導入が拡大しました。

当初の苗は細く弱々しく見えますが、田んぼに移植して1週間もすれば、従来の苗と変わらず元気に生育するため、品質への大きな影響はありませんでした。

必要育苗箱枚数を51%削減し、地域適応性を確認できました。
情報が不足する中、普及センターやJA、機械メーカーと連携しながら、実践的な独自マニュアルを作成しました。
また、研修会開催や巡回指導、新たに取り組む方には経験者がサポート役となるなど、丁寧な指導体制を整え、地域㆒丸となって取り組んできたことで、現在では作付面積のおよそ5割で密播中苗が採用されています。
省力化が営農の持続につながる
密播中苗は従来の田植機をそのまま使えるため、新たに機械を購入する必要がなく、導入のハードルは低いと言えます。
ただし、そのまま使えるとはいえ、移植機の爪は交換する必要がありました。この点はJAが助成などで省力化を支援している他、機械メーカーも対応機種を増やすなど協力することで、技術の普及が進んでいます。


多くの方が導入の効果を実感(図2)。箱並べや苗運びといった作業量が約半分となり、労力が大幅に軽減されたため、今後も地域での米作りが継続できそうです。
また、箱の枚数も約半分に減らせ、コストも削減できました。育苗ハウスの棟数を増やさずに作付面積を拡大できるため、㆒戸当たりの耕作面積が増加している地域のニーズにも合っていました。
今後は、他の技術と組み合わせた新たな省力化や、より低タンパクで高品質な米作りにも取り組んでいきたいと考えています。
山田さんにお聞きしました
密播中苗栽培のポイントは?
●1.5葉期までの管理
苗が1.5葉期になるまでの間の管理が、生育ムラを防ぐうえで特に重要。
●施肥管理
苗の密度が高いため、多くの肥料を必要とする。
追肥は倍量で2回が基本だが、少量ずつ3〜4回に分ける方が良い。
●育苗時のムレ対策
苗が過密状態になるため、常温によるムレのリスクがある。
ムレると苗の生育が不良になってします。
●水管理
水は多めに必要だが、徒長やムレを防ぐためやりすぎは禁物。苗の状態を確認しながら少しずつこまめに水やりする。
※初めて取り組まれる方は、最初から最大量(400㎖)の播種ではなく、350〜380㎖程度の播種量から試してみて、ご自身に合った播種量を見つけてください。