
この記事は2026年1月6日に掲載された情報となります。
岐阜県の老舗酒蔵、三千櫻酒造が東川町に移転してから今年で5年が経ちました。地元農家が初めて取り組んだ酒米「彗星」「きたしずく」から生まれる美酒の味わいが全道に広がっています。

三千櫻酒造株式会社
代表取締役社長 山田 耕司さん
石川県能登などで酒造造りもサポートしています。

参考価格2,500円(税込み)
JAひがしかわの有志が三千櫻のために初めて作った酒米「彗星」を45%にまで磨き上げました。 5月31日(土)に行われた「北海道米でつくる日本酒アワード2025」では、一般審査員413名による投票の結果、グランプリを受賞しています。 6月10日(火)に表彰式が行われました。
北海道米でつくる日本酒アワード

道産日本酒・道産酒米のブランド力や認知度向上を目指し、北海道産の日本酒のグランプリを決めるアワード。
明治10年創業の老舗酒蔵
三千櫻酒造は、岐阜県中津川市に明治10(1877)年に庄屋の4代目当主だった山田三千介が創業。
自ら杜氏を務める6代目当主の山田耕司さんは「酒造りも農業の担い手の一人である」という先代からの教えを胸に、地元で有機栽培した酒米(酒造好適米)「愛山」などを積極的に使用。
更には、台湾やメキシコでも現地の未経験スタッフを相手に醸造指導を行うなどの行動力で、日本酒の普及拡大に努めてきました。
東川町挙げての協力体制
そんな山田さんが、蔵の歴史143年目にして県外に移転という一大決心をした理由は、温暖化と蔵の老朽化でした。
冷涼な気候を求めてたどり着いた新天地は、酒造りに欠かせない水が自慢の東川町。町が米どころであることも決め手になり、2020年11月、最新設備を完備した酒蔵が誕生しました。
現在、三千櫻酒造で主に使われている酒米は岐阜時代から使い続けている「愛山」、そして北海道産酒米の「彗星」と「きたしずく」です。
それまで東川町では栽培していなかった「彗星」「きたしずく」に新たな可能性を見出した山田さんの要望に応え、JAひがしかわの有志たちが酒米栽培に初挑戦。まちを挙げて東川町生まれの日本酒造りが始まりました。
岐阜では山田さんも水田6枚ほどの酒米栽培を手がけ、棚田の畔塗り(あぜぬり)もするなど、米作りの苦労を身をもって経験していたと言います。
「北海道ほどの大規模になると、農家さんは本当にご苦労をされていると思います。町内の7農家さんに作っていただいた米の味を存分に引き出すのが、我々職人の仕事です。
特に年々持ち味が出てきた『彗星』は、味と香りのバランスがとてもいい酒に仕上がっています」
移転前は東京が7割だった販路も、現在は北海道で7割を占めるほど「北海道の地酒」になりつつある美酒、三千櫻。日本酒好きの裾野を広げる洗練されたデザインのラベルもすっかり定着し、16蔵ある北海道の酒蔵の中でも大きな存在感を放っています。


2020年の初仕込みには、地元の酒米生産者も特別に参加したそうです。
酒粕を堆肥に使う循環も
「我々は農家さんが酒米を作ってくれるおかげで食べていける」と語る山田さんは今、酒粕を堆肥に使いたいという生産者に無償で提供しています。「脱穀後の籾と混ぜると分解がより早く進むんだそうです。
また、栄養価も高く、牛も豚も喜んで食べてくれる。ご希望の方は声を掛けてください。『酒粕豚』なんていいんじゃないですか」と笑います。
移転後に東川町で新人を雇用し、蔵人に育成するだけでなく、蔵の焼失により、酒造りの場を求めていた本州の酒蔵の杜氏を副杜氏として受け入れるなど、人を育てつなぐ酒蔵、三千櫻酒造。
「将来的には東川町で育った人に蔵の運営を渡せる日が来るといいですね」と夢を膨らませています。
