この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局技術普及課
主査(普及指導)(農業革新支援専門員)
上田 朋法さん
ポイント
❶穂数確保対策〜老化苗、早期異常出穂防止対策の徹底〜
❷<本田の適切な水管理
❸適正施肥、適正籾数の確保
❹倒伏防止対策(ケイ酸施用、病害防除)
❺適期収穫の実施
❻【新技術】水稲「えみまる」の湛水直播栽培における窒素施肥技術
❼【新品種】「そらきらり(空育195号)」の栽培管理指標
ポイント❶
穂数確保対策〜老化苗、早期異常出穂防止対策の徹底〜
昨年は白未熟粒発生など、高温により品質の低下が見られました。対策としては、基本的技術を徹底することです。
まずは、初期生育を確保し、穂ぞろいの良い稲作りをすることが重要です。そのためには、苗の老化、早期異常出穂を防ぐこと、特に育苗後半の温度管理と適正な葉数での移植がポイントです(表1)。
近年は移植期が近づくと高温になることが多いので、移植開始日から逆算して後半の苗は育苗期間を短縮するなど、作業計画を見直しましょう。
ポイント❷
本田の適切な水管理
昨年のように登熟期間が高温になる場合は、掛け流し、常時湛水など気象に応じた適切な水管理が必要です。
登熟期間に十分な土壌水分を確保するためには、中干しを行って地固めをすると共に、溝切りを行って落水後にも必要に応じて水を出し入れしやすい圃場を作りましょう。
ポイント❸
適正施肥、適正籾数の確保
施肥量が多すぎると籾数が過剰になり、整粒歩合の低下や白未熟粒の発生を助長すると共に、タンパク値の上昇、品質の低下や、稲の倒伏が発生しやすくなります(図2)。
そのため、適正な籾数が確保できる施肥量に調整することが重要です。圃場ごとに土壌診断を行うと共に、過去年の稲の生育、タンパク値、稲の色の濃淡などの状況を加味して施肥設計を行いましょう。
ポイント❹
倒伏防止対策(ケイ酸施用、病害防除)
稲の倒伏を防ぐには、基本的にはポイント❷で述べた中干しによる地固め、ポイント❸で述べた土壌診断に基づく適正施肥を行うことが前提です。
その上で、稲体を丈夫にするためケイ酸資材の施用が有効です。昨年の倒伏圃場では紋枯病、疑似紋枯症や節いもちなどによって倒伏が助長したと考えられる事例もありました。
前年の病害発生状況に応じた防除対策を行いましょう。
ポイント❺
適期収穫の実施
昨年は夏の猛暑に加え、9月中旬以降に断続的な降雨があり、収穫が遅れた地域では胴割粒の発生が見られました(図3・図4)。
過熟になると品質が低下するため、玄米判定時の胴割粒の発生状況に応じて収穫日を検討するほか、収穫時期の降雨で収穫の遅れが予想される場合は、降雨前の収穫が望ましいです。
ポイント❻【新技術】
水稲「えみまる」の湛水直播栽培における窒素施肥技術
「えみまる」は低温での苗立ち、直播ができる作りやすい品種として注目されています。
増肥等により、(草丈)が長くなると倒伏しやすいため、今回、窒素施肥量に関する考え方が示されました。目標収量を540kg/10aとした場合、基肥窒素量は、移植栽培の㆒般うるち米に準じます。
追肥は茎数×葉色値が5葉期で10,000未満、幼穂形成期で28,000未満の場合、窒素2kg/10aを5葉期〜幼穂形成期に行います。
ただし、苗立ち本数の少ない場合や、地力の高い泥炭土や復元初年目の圃場では判断基準の適用は困難と判断されました。出穂期前に草丈が85cmを超える場合は倒伏軽減剤を処理し徒長を防止します。
窒素追肥要否判定基準についての詳細は、道総研 農業技術情報広場内、試験研究成果一覧にある「令和5年度 成績概要書」をご確認ください。>こちらからご覧いただけます
ポイント❼【新品種】
「そらきらり(空育195号)」の栽培管理指標
外食・加工用の新品種「そらきらり(空育195号)」の栽培普及に当たり、生育指標と施肥量が策定されました。
「そらきらり」は品質の安定性と多収性が利点で、目標収量は基準収量対比で120%が基本、窒素肥料は施肥標準量です。
より収量を重視する場合は、窒素施肥量を増やすと繁茂しすぎて日光が受けられないため、株間を広げると共に施肥標準量+2〜3kg/10aとし、目標収量は同130%「高」とします。
収穫期は出穂期後日平均気温積算値で1,100〜1,200℃です。